アコーディオンを抱えて、自由気ままに世界中の音を旅して歩く、シンガー・ソングライターの中山うり。2007年にデビューし、その後はコンスタントに作品をリリース。2012年には初のセルフ・プロデュースによるアルバム『ホロホロ』を発表した彼女が、ニュー・アルバム『鰻』を完成させた。

前作に続き、中山うり自身のプロデュースにより制作された本作は、ラグタイム、レゲエ、ブラジル、ラテンといった世界各地の多彩な音楽を下敷きに、管楽器のやわらかな音色や、夢見心地なスティールパン、おもちゃのようなパーカッションなど、楽しげな音が次々に飛び出す。彼女自身もいつもステージで演奏するアコーディオンやトランペットに加え、ガットギターやローズ・ピアノなど、いくつかの楽器を演奏しながら、カラフルなサウンドが繰り広げられていく。

旅するようなサウンドにのって歌われるのは、一人の女性の生活の風景や、浮かんでは消える想いが切り取られたようなリリック。毎日の暮らしの中で気持ちがフラついたり沈んだりしつつも、やっぱりお腹は空くもので。気晴らしにいろんな国の料理を味わって（そういえば本作には「ガパオNo.5」という楽曲も収録されている）、そのエキゾチックな美味しさに彼の地への想いを馳せ、妄想でトリップしているうちにさっきまでの感情はどこかに飛んでいってしまってた……中山うりの音楽は知らず知らずのうちに、幸福と満腹を与えてくれる。

中山うり『鰻』

（TUFF BEATS/SPACESHOWER MUSIC）

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