利便性やら生産性やらコスパやら、何かにつけて効率の良さばかりが重視される世の中で、ビッグバンドという演奏スタイルは時代の流れと明らかに逆行するものだろう。しかし、二十数名もの人間が時間やお金や家庭の事情などなど万障繰り合わせて一所に集い、それぞれのパートのためにアレンジされたスコアを辿りながら、想いをひとつに楽器を鳴らす──そこには、いくらテクノロジーが発展していっても得ることができないソウルとエナジーが宿る。

在日ファンクのメンバーとしても活躍するトロンボーン奏者＝ジェントル久保田がリーダーを務めるビッグバンド、ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド。結成10周年を迎える彼らは、17名の楽器奏者と女性シンガー3人による〈ジェントル・フォレスト・シスターズ〉、そしてコンダクター／トロンボーンのジェントル久保田の総勢21名からなる、スウィング・ジャズ・オーケストラだ。最近ではジャズ・シンガーakikoのアルバム参加や、バンド自らが演奏も手がけるCMへの出演、さらには東京03のコント公演への出演など、多岐にわたる活躍をみせている。また、選抜メンバーによるスモールコンボ〈ジェントル・フォレスト・ファイブ〉でもライブ活動を展開（先だって「TOKYO音楽酒場」で紹介した、HUB浅草店でもマンスリーで出演している）。

3月にリリースされたサード・アルバム『スリリング・ザ・バンド』は、10年の歴史で培った成熟と洗練を感じさせながら、バンド・サウンドの迫力はさらに高まった。ジェントル久保田のユーモラスなセンスは、トニー谷やフランキー堺といった先達からの影響も匂わせつつ、懐古主義に陥らない絶妙なバランスに着地している。ビッグバンドというある意味前時代的なフォーマットに大きな敬意を払いながら大胆に解釈し、今に生きる人たちを踊らせていくジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド。彼らは現在進行形のダンス・ミュージックとして、スウィング・ジャズを奏でている。

ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド
『スリリング・ザ・バンド』

（マインズ・レコード）

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