本コーナーTAP the NEXTでも紹介し大きな反響を呼んだ、W.C.カラスとズクナシ。この2組のアーティストのアルバムでプロデュースを手掛け、ルーツ・ミュージックをバックグラウンドに持つ個性あふれるアーティストを多く輩出しているキーパーソンの一人といえるのが、今回紹介するモアリズムの中心人物であるナカムラだ。

カリフラワーズのボーカル＆ギターとして活動していたナカムラにより、2007年国立を拠点に結成されたモアリズム。その名前は戦前のブルース／ジャズ・ギタリスト、ロニー・ジョンソンの曲名から取られたという。現在はナカムラを筆頭に、福岡のジャイブ・バンド〈ちょい濡れボーイ〉出身のギタリスト＝アントニオ佐々木、ブルース・バンド〈デルタ兄弟〉で活動していたドラマーのチャーリー横山、映画『ゆれる』の映画音楽ではピアノも担当しているマルチ・プレイヤーの清水“エスパー”光一（ウッドベース）で活動中。エンタテインメント性に富んだライブで、全国各地を飛び回る4人組だ。また、西川美和監督の映画『ディア・ドクター』『夢売るふたり』など、カリフラワーズ時代から続くタッグとしてすべての作品で映画音楽を手掛けるなど、その音楽性は多方面で評価されている。

通算5枚目となるニュー・アルバム『月のカタワレ』は、前作に引き続きモノラル録音で制作された作品。卓越した演奏力に裏打ちされたアコースティック編成で繰り広げられるのは、ブルース、スウィング、アーリー・ジャズを基調とした軽妙洒脱なサウンド。そこに悲哀とロマンに満ちたナカムラの歌と言葉が乗っかって、苦みばしった味わいの物語が紡がれていく。それらがモノラル録音によって、より生々しくゴロッとした音の塊のように迫ってくる──自宅のリビングも場末のジューク・ジョイントに変えてしまいそうな、モアリズム・ワールドに今宵も酔いしれたい。

モアリズム
『月のカタワレ』

（KUNITACHI RECORDS / P-VINE）

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