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KIRINJI──バンドの冒険心が随所に窺える、新たなフェーズへ突入したポップ・アルバム

2016.08.08

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アフロ・ファンクを彷彿させるしなやかな躍動感あふれるグルーヴ、タイトなライミングでグイグイと引っ張っていくラップ──名前を伏せて聴いたら、これがKIRINJIの曲だとはわからないだろう。

2013年に堀込高樹を中心とした6人組のバンドとして新たに活動を開始した、KIRINJI。2014年にはオリジナル・アルバム『11』をリリース。ライブを重ねながら、翌2015年にはライブ音源をベースに大胆なポスト・プロダクションを施して制作された『EXTRA 11』を発表。そういった活動を経て濃密さを増したメンバー間の絆と、より強固になったバンド・アンサンブルから生まれたのが、2年ぶりに発表されるニュー・アルバム『ネオ』だ。

ライムスター(宇多丸、Mummy-D)のラップを大々的にフィーチャーした「The Great Journey feat. RHYMESTER」は、まさしくKIRINJIの〈ネオ〉なスタイルを大胆に示した楽曲。肉体的なグルーヴをここまで前面に打ち出したナンバーは、これまでのKIRINJIにも、それ以前のキリンジにも見られなかったもの。ホテルの「空室」を求めて盛り場をさまよう男女の光景に、人類の起源という壮大なテーマを重ね合わせたリリックもナンセンスに爆発した、奇跡的なコラボレーションだ。

今回のアルバム『ネオ』では、堀込以外にもコトリンゴ(ピアノ/キーボード/ヴォーカル)と弓木英梨乃(ギター/ヴァイオリン/ヴォーカル)の女性陣によるボーカル曲も2曲ずつ収録。前作とは違いあらかじめリードボーカルを取るメンバーを想定して作られたという楽曲は、歌い手のパーソナリティが反映されることで、ポップ・ミュージックとしての強度と輝きを増した。またコトリンゴや千ヶ崎学(ベース)がそれぞれ堀込と詞曲を共作したナンバーも収められ、卓越したミュージシャンたちの個性やアイディアがKIRINJIという集合体の中で実に有機的に作用しているあたりも、バンドとしての進化と言えるだろう。

堀込ならではのシニカルかつユーモラスな視点が切り取る情景描写を、独特の言語感覚をまとわせてポップに昇華していくリリシズムは、作品を重ねるごとにシンプルに削ぎ落とされてきた印象を受けるが、それがかえって1フレーズごとの切れ味を深めている。

サウンドも楽曲も新たなフェーズへと突入したKIRINJIの『ネオ』は、聴き手に新鮮な驚きと発見を与えてくれるポップ・アルバムだ。


KIRINJI『ネオ』

KIRINJI
『ネオ』

(Verve/ユニバーサルミュージック)


KIRINJI official website
https://natural-llc.com/kirinji/



KIRINJI TOUR 2016
9月22日(木・祝)金沢 AZ
9月23日(金)京都 磔磔
9月25日(日)仙台 CLUB JUNK BOX
9月28日(水)Zepp Tokyo
10月1日(土)札幌 PENNY LANE 24
10月8日(土)鹿児島 CAPARVO HALL
10月10日(月・祝)福岡 イムズホール 
10月15日(土)松山 WstudioRED
10月16日(日)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
10月26日(水)名古屋 ダイアモンドホール(
10月27日(木)なんば Hatch
10月30・31日(日・月) 品川 ステラボール

詳細はKIRINJI official websiteを確認ください。

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