小さな画面の光では
魂は照らせない
スクロールしたその先で
随分と回り道

（中略）

僕らはそろそろ始めよう
地図も持たずに出かけよう
四の五の言わずに始めよう
行き先も告げずに出かけよう
どこかで歩き疲れたら
調子外れな歌うたおう

（「そろそろはじめよう」より）

1999年に仲井戸麗市プロデュースのシングル「オレンジ」でデビュー以来、ブルースやソウル、レゲエからの影響を大きく感じさせる音楽性と、伸びやかでいて可憐な歌声で独特の存在感を放つシンガー、Leyona（レヨナ）。

活動初期から数多くのミュージシャンとのコラボを展開し充実の作品を発表してきた彼女。オリジナル作品以外にも、はっぴいえんどの「風をあつめて」カバー・バージョン（2001年）が世代を超えた支持を集め、また最近では、彼女が2003年にリリースした忌野清志郎プロデュース「500マイル」が（同曲をフィーチャーした月9ドラマの影響もあってか）リバイバル・ヒットで最注目を集めたのも記憶に新しいところだ。

そんなLeonaの6年ぶりの新作となるのが、8作目のオリジナル・アルバム『わすれちゃうよ』だ。アルバムタイトルのきっかけにもなった「忘れちゃうよ」の詞曲を手がけた奥田民生を筆頭に、仲井戸麗市、吾妻光良（吾妻光良 & The Swinging Boppors）、福島康之（バンバンバザール）、岡本定義（COIL）という、彼女がこれまでのキャリアで出会ってきた多彩で多才なアーティストたちが楽曲を提供。

バラエティに富んだ楽曲群をまとめるプロデュースには、シンガー・ソングライターの臼井ミトンを起用。1984年生まれの臼井は、ジェイムス・テイラーのライブに感銘を受けてシンガー・ソングライターへの道へ進むことを決意。録音機材を背負ってアメリカ各地を渡り歩いては、ジム・ケルトナーやウィル・リーなど有名ミュージシャンに直接交渉しレコーディングを行ってアルバムを完成させたという風変わりな経歴を持つミュージシャンだ。

ブルースやR&B、ニューオーリンズ音楽、カントリー、フォークロック、70年代ソウル……と、アメリカン・ルーツ・ミュージックを掘り下げながら、現代的な感覚にフィットさせていく臼井のサウンド・プロデュースと、年齢を重ねて落ち着き払った魅力が加わったLeyonaの歌声の相性は抜群。聴きごたえのある一枚に仕上がっている。

Leyona
『わすれちゃうよ』

（Recoz/スペースシャワーネットワーク）

• iTunes
• Amazon