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塚本功──孤高の存在感を放つギタリスト、5年ぶりのソロ・アルバム

2016.10.18

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ギブソンのフルアコースティックギター「ES-175T」をダイレクトにアンプに突っ込んで響かせるのは、時に埃っぽい荒野のような渇ききった音色で、時に感情を激しく露わにしたような爆音で、時に陶酔してしまうほどロマンチックでドリーミーなフレーズで──アンプ直結のサウンドとは思えないほどに多様な表情を見せる彼の演奏は「七色のギター」と称される。

自身のバンドであるネタンダーズをはじめ、ピラニアンズや小島麻由美のサポート、スライ・マングースなどの活動で知られるギタリスト、塚本功。2002年に発表した初のソロ・アルバムは「エデンの東」「アヴェ・マリア」「恋のアランフェス」といったエバーグリーンな名曲を、ブルースに根ざした解釈でカバーしていったインスト集で高い評価を集めた。

その当時に取材した時、彼は「たとえばジョン・リー・フッカーがヨーロピアンなメロディーを一人で弾いてたらどうなるか? 自分がブルース・ギターで表現したいって思ってたものを、ブルースの曲じゃない曲で出せたら」と語ってくれていたのだが、そのスタンスは今も昔も一貫している。

ニーナ・シモン「If You Knew」、山田耕筰「この道」のカバーも含む、5年ぶり4作目となるニュー・アルバム『Arches(アルシュ)』は、最近のライブでのスタイルを反映させたシンプルでドライなギター・サウンドを軸に、オリジナル曲を中心に構成したインスト・アルバム。塚本はここ数年パーマネントな拠点を構えずに、ギター1本だけで全国各地を演奏してまわるブルーズマンのようなライフスタイルを送っているのだが、旅先で演奏している中で浮かんだフレーズを元に完成させた曲があったりと、パーソナルな肌触りを感じさせる作風が新鮮だ。

しかし、やさしくおだやかな日常を描いたような曲調の奥にも、どこかにささくれ立った感覚を匂わせ、心を揺さぶってくるのが塚本功のギターの魅力と言おうか。「自分の中ではパンクロックの延長線上にあるものを、どうしてもどこかに入れないと気が済まない」とは、今回のアルバムについて話を訊いた時に彼の口から出た言葉だが、しっとりとしたインスト集だなんて思って聴くとがっつり心をえぐられる、ロックンロール・アルバムだ。


塚本功『Arches』

塚本功
『Arches(アルシュ)』

(TINKER RECORDS)


official website
http://www.es175.net/
https://www.facebook.com/isao.tsukamoto.3


Live Schedule
10/18(火)広島・ナンディ 塚本功ソロ
10/19(水)尾道・ハライソ珈琲
10/20(木)岡山・城下公会堂
10/22(土)東京・東中野ポレポレ坐 塚本功+塚本真一
10/23(日)東京・吉祥寺エアガレージ 塚本功ギター教室 & ワークショップ
10/25(火)東京・代官山UNIT UNICE SALOON 「Grand Gallery Store 10th Anniversary HOME PARTY 音と食の夕べ」 塚本功ソロ
10/26(水)東京・赤坂クローフィッシ 塚本功×イノトモ
10/28(金)東京・幡ヶ谷7CAFE 塚本功ソロ

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