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ソンゴイ・ブルース──マリ共和国ソンゴイ族の若者たちが奏でるブルース・ロック

2017.07.24

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西アフリカを流れるニジェール川中流で、マリ共和国とニジェール共和国にまたがって居住する、ソンゴイ族。トライブの誇りを持った4人によって結成されたブルース・ロック・バンドが、ここに紹介する〈ソンゴイ・ブルース〉だ。

首都バマコで大学在学中に出会った、アリユ・トゥーレ(ボーカル)をはじめとするメンバーたち。2012年に起きたマリ北部紛争によってイスラム過激派組織に地元が占領され、彼らは難民となってしまう。あらゆる自由が奪われ音楽までもが禁止になってしまった故郷──そうした苦しい状況に抗い、故郷への変わらぬ想いを込めてバンドを結成したのだという。

ボーカル、ギター、ベース、ドラムというシンプルな編成から生み出されるサウンドは、現地の伝統音楽やアフロ・ビート、アフリカン・ポップからの影響を色濃く反映させた骨太なブルース・ロック。トゥアレグ族出身のティナリウェンに代表される西アフリカのデザート・ブルースともリンクしつつも、ソンゴイ・ブルースの音楽は彼らが慣れ親しんだR&Bやソウル、ヒップホップなどの同時代の音楽も自在に取り入れるフレキシブルなスタイルからは、自分が生まれ育った故郷と文化に最大級の敬愛を込めながらも、人種や国境を越えて瞬時に行き交う情報を呑み込んでは、現代社会をタフに生き抜いていこうとするしなやかな生命力をも感じさせる。

デーモン・アルバーン率いる音楽プロジェクト=アフリカ・エクスプレスのアルバムに楽曲が抜擢された彼ら。2015年にはファースト・アルバム『Music In Exile』を発表。ヤー・ヤー・ヤーズのギタリストであるニック・ジナーらがプロデュースを手掛けた本作はブライアン・イーノから絶賛され、またデーモン・アルバーン、ジュリアン・カサブランカス(ザ・ストロークス)、アラバマ・シェイクスらがサポート・アクトに起用するなど、様々なミュージシャンから注目を集める存在となった。

今年7月に日本国内盤がリリースされたセカンド・アルバム『Resistance』は、M.I.A.やクリスタル・ファイターズなど、辺境音楽と現在進行形のサウンドをミクスチャーさせたアーティストたちとの仕事も多いニール・コンバーをプロデューサーに迎え制作。「Sahara」にはイギー・ポップがボーカリストとしてフィーチャーされているほか、南ロンドンのグライムMC=エルフ・キッドをフィーチャーした楽曲も収録。

ボーカルのアレフは「『Resistance(抵抗)』こそが、僕らが音楽を続ける起動力さ」と語る。苦境や憂鬱に立ち向かいながら、明日を生きるための力となる音楽──ソンゴイ・ブルースは、まさに彼らにしか生み出せないブルースを今日も鳴らし続ける。


ソンゴイ・ブルース『Resistance』

ソンゴイ・ブルース
『Resistance』

(Transgressive / HOSTESS)


official website
http://songhoyblues.com

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