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キセル──新たな側面を窺わせながらドリーミーな音世界をより濃密に描いていく3年ぶりの新作アルバム

2018.01.02

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下り電車は今日も 憂いを運んで
新しい物語りを 紐解くみたいに

夕闇 浮かぶ富士の 山をみていたら
地球の回る音が 聴こえた気がした

今日 一日と 何処までもゆく
いつかのわたしや いつかのあなたも
(「富士と夕闇」より)


今年結成19周年を迎える辻村豪文と辻村友晴による兄弟ユニット、キセル。最近ではバンドでのライブを中心に、人気の劇団〈ヨーロッパ企画〉の劇伴なども担当。さらに兄・豪文が新進女性シンガー・ソングライター〈mei ehara〉のプロデュースを手掛け、弟・友晴も小沢健二やmei eharaのサポートを務めるなど、個人としても充実した活動を展開してきた。そんな彼らが、2014年末にリリースされた『明るい幻』から約3年ぶり通算8枚目となるオリジナル・アルバム『The Blue Hour』を完成させた。

今回のアルバム『The Blue Hour』は、辻村兄弟に加えて、長年キセルのライブやレコーディングをサポートしてきた北山ゆうこ(ドラム)、2016年のライブから参加してきた加藤雄一郎(サックス、フルート)からなる4人のアンサンブルを軸に、キーボードのエマーソン北村と野村卓史、ヴィブラフォンの山田あずさをゲストに迎えてセッションを展開。

さまざまな想いやそれぞれのタイム感が交錯していく日々を一歩ずつ力強く踏みしめるようにザクザクと刻まれるリズムギターが印象的な「富士と夕闇」で幕を開ける『The Blue Hour』。アルバム全編にフィーチャーされたサックス/フルートの音色が、これまでキセルが奏でてきた牧歌的でありながらもどこかメランコリックでサイケデリックなバンド・サウンドに、新たな色彩と物語を加えていく。R&B/ネオソウルのキセル的新解釈といえる「二度も死ねない」、レゲエ調の粘っこいリズムで深淵に誘う「うしろから来る」、ヨーロッパ企画の公演にテーマ曲として提供したエキゾな音頭風ナンバー「来てけつかるべき新世界」、変拍子のリズムに細かく分解された言葉と流麗な管楽器の音色が有機的に絡み合っていく「ひとつだけ変えた」……と、新たな側面を随所に窺わせながらも、キセルにしか表現できない浮遊感あふれるドリーミーな音世界は、一層濃密さを増している。

ひんやりと頬を刺す冷たさとおだやかな日差しの暖かさが混じり合う空気、見上げれば喜びも悲しみも平和も絶望もすべてを呑み込んだようななんとも言えない色合いの青が広がる──そんな冬空の下、ゆっくりと歩きながら聴いてみたい名盤だ。


キセル『The Blue Hour』

キセル
『The Blue Hour』

(カクバリズム)


official website
http://www.nidan-bed.com/
http://kakubarhythm.com/special/thebluehour/


『The Blue Hour』発売記念ワンマンTour2018
1月6日(土)大阪・梅田クラブクアトロ
1月7日(日)愛知・名古屋 クラブクアトロ
1月13日(土)東京・恵比寿リキッドルーム
1月19日(金)宮城・仙台 darwin 
1月21日(日)北海道・札幌 BFHホール
1月27日(土)石川・金沢 GOLD CREEK 
1月28日(日)長野・まつもと市民芸術館小ホール
2月3日(土)広島・セカンドクラッチ
2月4日(日)福岡・イムズホール
2月12日(祝)沖縄・那覇 桜坂劇場ホールA 
3月17日(土)京都・磔磔

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