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mei ehara──辻村豪文(キセル)が初プロデュースを手がけた、大注目の新鋭シンガー・ソングライター

2018.01.15

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時は二度と戻らない 髪も切れば くる疼き
投げた賽も下を向いて 涙流す挨拶もある

巡る度もつれた糸 逸れた目に代わる
飛び乗っても枯れて沈む 葉の船では頼りない
(「戻らない」より)


1991年愛知県生まれのシンガー・ソングライター=mei ehara(めい えはら)。個性派アーティスト揃いのレーベル〈カクバリズム〉から、2017年11月に発表された彼女のアルバム『Sway』は、優しく柔らかでいてうっすらと翳りを匂わす歌声、すっと胸に沁み入るメロディ、シンプルなサウンド、そして言葉のひとつひとつが淡い色彩を帯びたようなリリック──表現のすべてにおいて、ハッと心を奪われてしまいそうな魅力にあふれている。

学生時代に自主映画のBGMを宅録で作ることから音楽制作をスタートさせたmei ehara。その後、自ら歌いはじめ〈may.e〉という名義で自主制作の作品を発表してきたという。Yogee New Wavesなどのアルバムにコーラスとして参加する一方、音楽活動と並行して自ら文芸誌を主宰し、また写真やデザインでの創作活動も行うなど多才ぶりもみせる。

アーティスト表記を〈mei ehara〉に一新して制作したアルバム『Sway』は、レーベルの先輩であるキセルの兄こと辻村豪文がプロデュースを担当(レコーディングにはキセルの弟・辻村友晴も参加)。mei eharaが宅録で作ったデモの良さを活かしつつ、ミニマルでいてグルーヴィなアレンジで楽曲の世界をより鮮やかにリファインしていく辻村豪文の手腕は、他のアーティストへのプロデュース・ワークは初めてとは思えないほどに冴えている。そのサウンドのどこかいびつで、だけど昔からそこにあったようにしっくりくる感覚は、言葉のコラージュのようでありながら豊かな詩情を描く彼女の歌詞の味わいと重なる。

たとえば荒井由実や大貫妙子、金延幸子といったシンガー・ソングライターたちが世に出てきた当時にリアルタイムでデビュー・アルバムを耳にした人々は、2018年に暮らす我々がmei eharaのこのアルバム『Sway』を聴いて感じる、底知れぬ才能に出会えた高揚感や、これから何十年と愛聴できる音楽に出会えた喜びを、きっと同じように味わったんだろうな……などと妄想を巡らせてみたくなる傑作だ。

酔いは水色 冴える 何も変わらず手を振り
光 まばたき止める 今は特別さ

間に合う 逸らさず かすかに灯る
(「冴える」より)



mei ehara『Sway』

mei ehara
『Sway』

(カクバリズム)


official website
http://eharamei.com/
http://kakubarhythm.com/special/sway/





Live Schedule
2018年1月20日(土)東京・渋谷 WWW (w/Taiko Super Kicks、yumbo)
2018年1月27日(土)宮城・仙台 beauty books & coffee Cy
2018年2月10日(土)福岡・LIV LABO (w/NOMSON GOODFIELD)
2018年3月4日(日)京都・磔磔 (w/トリプルファイヤー、バレーボウイズ 他)
2018年3月21日(水)兵庫・神戸 蘇州園 (w/VIDEOTAPEMUSIC、王舟、テニスコーツ、Predawn、エマーソン北村、Rachael Dadd 他)

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