1996年にデビュー以来、独特な言葉のセンスもって、人が生きることの葛藤を生々しい筆致で綴ってきたシンガー・ソングライター、小谷美紗子。ASIAN KUNG-FU GENERATIONや星野源など、多くのミュージシャンからも信奉される彼女が、前作『ことの は』から3年ぶり、フルアルバムとしては実に6年ぶりとなる新作『us』を発表した。

長く活動を共にしている玉田豊夢（ドラム）と山口寛雄（ベース）とのトリオ編成は本作でさらなる円熟をみせ、躍動感と繊細さを併せ持ったアンサンブルが、小谷の歌を鮮やかに彩る。

彼女は2012年、年に3回のワンマンライブを行い、毎回3曲ずつ新曲を披露していった。その9曲を元にして生まれたニュー・アルバム『us』は、原発に依存した社会を取り上げた「enter」にはじまり、3.11以降明らかになった、日々の暮らしの多様な側面を切り取っていく。

彼女自身3.11の震災直後、アーティストとして出来ることを自問自答しながら、音楽活動から離れ、約1年ほど被災地を支援する活動を行っていたという。そんな困難な状況を目の当たりにする中で、悲しみの先にある「光」や「希望」を見出していく。アルバム『us』は、そんな優しさと力強さを感じさせる作品だ。

小谷美紗子『us』

HILLSTONE Records

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