在日ファンクのトロンボーン奏者としても活躍するジェントル久保田。彼がコンダクターとして指揮を執るスウィング・ジャズ・オーケストラが、ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド（以下、Gentle Forest Jazz Band）〉だ。

2005年に結成したこのビッグバンドは、ジェントル久保田と同じく在日ファンクのメンバーでレキシのサポートでも活躍する村上基（トランペット）、Yasei Collectiveの松下マサナオ（ドラム）と別所和洋（ピアノ）、小島麻由美やモッチェ永井のサポートなども務める上野まこと（サックス）、バロンと世界一周楽団などに参加する八木橋恒治（ギター）といったポップ・フィールドのミュージシャンをはじめ、ジャズ・シーンで活躍する個性的なプレイヤー17人からなる楽器隊と、流麗なハーモニーとキレのあるスウィンギンなスキャットを聴かせる女性ヴォーカル3人組〈ジェントル・フォレスト・シスターズ（Gentle Forest Sisters）〉の総勢21名で活動している。

10年以上に及ぶ活動の中で3枚のアルバムを発表し、精力的にライブも展開してきたジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド。とくにここ数年は、シンガー・ソングライター二階堂和美とがっぷり四つに組んだコラボ〈二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band〉でのツアーやアルバムのリリースが好評を集めた（インタビューはこちら）。また人気のコントグループ〈東京03〉や、名コメディアン小松政夫らと音楽と軽演劇／コントを融合させたステージを展開。さらには映画『くも漫。』の音楽や、CM音楽を手掛けたたりと活動の幅を大きく広げてきた。

そんな彼らが4作目のアルバム『GFJB』で、なんとメジャー・デビューを果たした。景気のいい話をあまり聞かない音楽業界で、決して生産性や効率がいいとは言えないビッグバンドとディールを結んだレーベルは、なかなか思い切った決断をしたものだと思う。それもこれも、ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンドという音楽集団の優れた音楽性とあふれる個性が買われた結果であるのはもちろんのことだ。

バナナマン単独ライヴのテーマとして提供した「Blues Banana」で賑やかに幕を開ける本作。小松政夫との共演舞台のために書き下ろされた「いつも心にシャボン玉」は盟友・二階堂和美のボーカルで新たにレコーディング。また小松政夫の代表的なギャグのひとつである「しらけ鳥音頭」を軽快なスウィング調に生まれ変わらせるなど、ユニークな試みもふんだんに織り交ぜられた。

以前に比べてより強靭に、よりしなやかに、より煌やかに進化したバンド・サウンドは、近年の多岐にわたるコラボで磨かれた演奏力と、さまざまなエッセンスを吸収して得た表現力の賜物だろう。カウント・ベイシーやデューク・エリントンから連綿と続くスウィング・ジャズの系譜をしっかりと踏襲し、さらにはスパイク・ジョーンズ、トニー谷、フランキー堺といった冗談音楽の先達への敬愛にあふれながらも、単なる焼き直しや懐古主義に陥らず、スウィング・ジャズが現代の日本にも通じるフレッシュなダンス・ミュージックだということを全身全霊で表現している。軽快洒脱なビッグバンドの音色は、世間に漂う鬱屈したムードを痛快に蹴散らしてくれることだろう。

ジェントル・フォレスト・ジャズ・バンド
『GFJB』

（ワーナーミュージック）

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