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コートニー・バーネット──デビュー作の世界的ブレイクから3年、力強い前進を感じさせる2ndアルバム

2018.06.05

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夜の公園を散歩したい
男は女に あざ笑われることを恐れてる
夜の公園を散歩したい
女は男に殺されることを恐れてる
私は鍵を
指の間に挟んでる

彼は言った
“アルファベットが入ったスープを飲んで
君よりすてきな単語を吐き出してみせる”
でも彼はしなかった
世界があなたを中心に回ってると思ったら
それは大きな勘違い
(「Nameless, Faceless」)


1988年生まれのシンガー・ソングライター、コートニー・バーネット。メルボルンを拠点に活動する彼女は、2015年にリリースしたデビュー・アルバム『Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit』が大きな反響を集め、グラミー賞「最優秀新人アーティスト」へのノミネート、ブリット・アウォード「インターナショナル女性ソロ・アーティスト賞」を受賞するなど、世界的ブレイクを果たした。

関連記事:TAP the NEXT「コートニー・バーネット──激しいギターと鋭いリリックで日常を切り取る注目のSSW」

しかし順風満帆に見えた彼女だが、次なる新作を作り出そうとするも思うように曲が書けなくなってしまったという。

スランプに陥っていたコートニーを救ったのは、フィラデルフィアを拠点に活動するミュージシャン、カート・ヴァイルだった。ザ・ウォー・オン・ドラッグスの初代ギタリストで、現在はUSインディー・シーンを代表するシンガー・ソングライターとして活躍するカートから声をかけ、デュオによるコラボ・アルバム『Lotta Sea Lice』を発表。リラックスした環境で行われたこの作品の制作を通じて、ソングライティングへの自信を取り戻し、自らの新作にふたたび取り掛かることができた。


そうして完成した待望のセカンド・アルバムが、『Tell Me How You Really Feel』だ。前作のレコーディングを支えた気心の知れたミュージシャンに加えて、ザ・ブリーダーズのディール姉妹らが参加した本作。

2017年のゴールデン・グローブ賞授賞式において女優のメリル・ストリープがスピーチで紹介した、〈心が壊れたなら、それをアートに変えるのよ〉という故キャリー・フィッシャーの言葉を引用した「Hopefulessness」で幕を開けるこのアルバム。その曲名のように〈Hopefullness(希望)〉と〈Hopelessness(絶望)〉が隣り合わせにある社会で、友人や家族、恋人同士、ネット上でつながっている人々、あるいは女性と男性……あらゆる人間関係に生じる意思の疎通と断絶をシリアスな視点で切り取りながら、自らの心に生まれる迷いや願いをストレートに吐露していく。さまざまな感情が渦巻く世の中でいかに自分自身と向きあうか、そして希望に向かって足を踏み出せるか──このアルバムは世間に向けた明確な意思表示であり、また表現者としての力強い前進を感じさせる作品となった。

「私にとって曲作りは、明確な表現を長い時間かけてゆっくりと見出すゲームなの。このアルバムは、私なりに人間の行動と心理学の基礎を学ぶ入門編だった。色々な疑問や見解全てを、また別のとめどない思考へと枝分かれしてしまう前に、どうやって一つの意味の通じる歌にするか、という」


コートニー・バーネット『Tell Me How You Really Feel』

コートニー・バーネット
『Tell Me How You Really Feel』

(Traffic/MilK! Records)




*記事内のコートニー・バーネットの発言は、すべてオフィシャルバイオから引用。

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