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Seuss──50~60年代のロックンロールやオールディーズからの影響を「現在の音」で爆発させる4人組

2018.10.01

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現在の空気をたっぷり吸い込んで、ど真ん中を突っ走っていくロックンロール──Seussのデビュー・アルバム『Love』を聴いて、そんな印象を持った。パッと耳にした印象はオールドタイミーなロックだが、演奏している若者たちが、いかにも「古い音楽が好きです」といった風体でないところが、まず新鮮に映る。

 2013年に結成されたSeuss(スース)は、谷本悠馬(ギター、ボーカル)、金子勇貴(ギター)、前田凌(ドラム、コーラス)、奥畑詠大(ベース、コーラス)からなる20代半ばの4人組。関西を拠点に活動する彼らは、サイケデリックでローファイなサウンドを鳴らすインディー・ロック・バンドとして、早くから注目を集めていた。

 しかし2016年頃から、50~60年代のロックンロールやロカビリー、オールディーズからの影響を反映さえたバンド・サウンドへと大胆にシフトチェンジしていく。2017年からはメンバーが理想とするパーティをコンセプトを掲げたマンスリーイベント「Fun,Fun,Fun」をスタート。ただライブだけを観にくるイベントとは違って、オーディエンスも酒を飲んで談笑しながら、そこに自然と音楽があるような肩肘張らない感覚のこのパーティでは、Seussが演奏する楽曲もオリジナルだけじゃなく、カバーや客からのリクエストにも応えるというパーティ・バンドっぷりを発揮。

 また2016年3月に発表したミニ・アルバム『Todays Was Good』ではラヴィン・スプーンフル「Do You Believe In Music?」をカバー。さらに会場限定発売のカバーCDではチャック・ベリー「Johnny B. Goode」からビーチ・ボーイズ「Surfin’ USA」、ビートルズ「All My Loving」、サム・クック「Having A Party」など、ドがつくほどの名曲群を取り上げていた。この衒いのない選曲と、そこからフレッシュな輝きを見出していくセンスは、まさに平成生まれの4人だからこそ持ち得た感覚なのかもしれない。そうしてオールディーズ・ナンバーを演奏しながら、そのエッセンスを吸収していくことで、Seussのバンド・サウンド、そして彼らが生み出す音楽は、さらなる魅力を湛えていった。

 今年8月にリリースされたデビュー・アルバム『Love』は、先行シングル「Feel It, Like It」を筆頭に、ロックンロール、リズム&ブルース、ロカビリー、オールディーズと、ルーツへの傾倒ぶりは変わらないが、アンサンブルの端々に「現在の音」をしっかりと刻み込んでいる。ただの懐古主義じゃない、時代を超えて息づくロックンロールの衝動に、新しい風を送り込んでは激しくスパークさせる。それが彼ら、Seussだ。
 


Seuss『Love』

Seuss
『Love』

(SRR X SSM/スペースシャワーミュージック)


Live Schedule
2018年10月6〜8日(土〜月)大阪・MINAMI WHEEL 2018
2018年10月10日(水)京都・神宮丸太町 METRO “京音-KYOTO-vol.11

official website
https://seusstheband.tumblr.com/

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