テナーサックス奏者・甲田‘ヤングコーン’伸太郎を中心として1998年に結成されたジャンプ・ブルース・バンド、ブラッデスト・サキソフォン（BLOODEST SAXOPHONE、通称ブラサキ）。これまでに11枚のアルバムをリリースする傍ら、小さなライブハウスからフジロックやSunset Liveのような大型野外フェスまで、全国各地で精力的なライブ活動を展開。2015年には香港に進出、年2〜3回行う公演は毎回ソールドアウトの盛況ぶりだという。
また「The Deacon’s Hop」などで知られる、今年惜しくも鬼籍に入った伝説のホンカー＝ビッグ・ジェイ・マクリーニーを日本に招いてがっぷり四つに組んだコラボ・ライブを展開したかと思えば、ルイ・アームストロング楽団で活躍した女性シンガー＝ジュエル・ブラウンをフィーチャーしてアルバムを制作するなど、レジェンドたちの素晴らしさを現在のリスナーに伝承していくようなアクションも行ってきた。
20周年という節目を迎えた2018年、ブラサキは2枚のアルバムを連続でリリースした。1枚はテキサスで活躍する実力派女性シンガーたちをフィーチャーしたブルース＆ソウルのボーカル・アルバム『I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU』。そして、もう一枚はブラサキのライブ定番曲から、新曲、名曲カバーまでを新録した『IN TEXAS』だ。
2017年9月、バンドはテキサス州オースティンへと渡った。テキサスはイリノイ・ジャケーをはじめ、〈テキサス・テナー〉と呼ばれる豪快なサックス奏者たちを多く輩出した街。2週間ほどの滞在で現地のブルース・フェスへの出演やリハーサルをこなしながら、約30曲分のレコーディングを敢行するという強行軍で制作された。先に発表された歌モノの歌モノアルバム『I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU』には、山下達郎「YOUR EYES」（！）、マディ・ウォーターズで知られる表題曲をはじめ、ジャニス・ジョプリン、ビッグ・ママ・ソーントン、エイモス・ミルバーン、ルーファス・トーマスなどカバーを収録。バラエティ豊かで懐の深い音楽性が前面に出た、楽しい一枚となった。
一方、バンド単独名義のアルバムとなる『IN TEXAS』は、イリノイ・ジャケー「BLUES FROM LOUISIANA」カバーにはじまり、ダークなラテン・アレンジが洒脱な「RUN JOE」、ストレイ・キャッツでおなじみ「THAT MELLOW SAXOPHONE」など冒頭から思わず拳を高くあげてしまいたくなるような、アツく男臭い魅力で畳み掛ける。名曲カバーに並んで、現地ミュージシャンとのセッション曲も収録され、また「走れヤングコーン」「PORK CHOP CHICK」など、初期のライブから演奏され続けてきた楽曲にも新たなアイディアと息吹が注入されるなど、まさにジャケットの絵のごとく、暴れ馬を乗りこなしながら埃っぽい大地を疾走していくような全12曲に、誰もがシビレることだろう。
20周年を迎えたブラサキだが、実は今年になって長く在籍したメンバーが2名離脱。この2枚のアルバムは、長く歩んできた仲間との最後のレコーディングを収めたメモリアルな作品となった。しかし、このアルバムで過去の時間に区切りをつけたブラサキは、新たな歩みをはじめている。バンドは現在、新メンバーを迎えて5人編成で活動中。このアルバムを足がかりに、今後はアメリカでの活動も視野に入れているという。聴けば一発で世界基準だとわかる、ぶっ太いサウンド。ブラサキはゴリゴリのブロウで、荒野を切り拓いていくことだろう。
ブラサキpresents “Snuck宇宙”
2018年12月22日（土）＠東京・下北沢 440
LIVE：Bloodest Saxophone／Bloodest Saxophone feat. Crystal Thomas
DJ：EZ／MIYAKO
Live Drawing：早乙女道春
料理：植野広生（dancyu編集長）／めん亭はるもと／甲田伸太郎
Big Jay McNeelyトリビュートLive supported by BLUES & SOUL RECORDS
2019年1月7日（月）東京・渋谷クラブクアトロ
LIVE：Bloodest Saxophone
スペシャルゲスト：伊東ミキオ（p）、浦朋恵（b.sax）、KOZZY IWAKAWA (THE COLTS、THE MACKSHOW／vo,g）、サンコンJr.（ウルフルズ／dr）、Sugar Spector（vo）、藤井康一（t.sax）ほか
DJ：ピーター・バラカン
Live Drawing：早乙女道春
official website
http://bloodsax.main.jp/
