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Saigenji──ブラジル音楽を軸に、ポップスの新たな地平を切り拓くシンガー・ソングライターの新作

2018.12.18

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 ブラジル音楽や南米のフォルクローレを基軸に置きながら、音の海を自由に泳ぎ渡るように表現していくシンガー・ソングライター、Saigenji(サイゲンジ)。

 1975年に広島で生まれた彼は、沖縄〜香港〜沖縄〜東京と移り住みながら育った。9歳の時に「コンドルは飛んでいく」に感銘を受けたことでケーナを吹き始めたことで、フォルクローレをはじめ南米の音楽を身近に感じるようになった。大学生の頃にMPBやボサノヴァ、サンバなどブラジル音楽の魅力に取り憑かれて、ギターと歌をはじめたという。2002年にアルバム『Saigenji』でデビューすると、しなやかなリズム感から繰り出される卓越したギター・プレイと、緩急自在なスキャット、そして伸びやかな歌声が大きな反響を呼んだ。

 以降、カエターノ・ヴェローゾやガル・コスタ、アート・リンゼイなどを手がけたMPB新時代の旗手=カマル・カシンをプロデュースに迎えてリオデジャネイロ録音を敢行した『ACALANTO』(2005年)、デビュー10周年を記念して制作された弾き語り一発録音アルバム『ONE VOICE, ONE GUITAR』(2012年)など、これまでに8枚のオリジナル・アルバムをリリース。ライブ活動も精力的に展開し、日本国内はもちろんパリや韓国、東南アジアなど海外公演を敢行し、高い評価を集めている。また、MISIA、MONDO GROSSO、冨田ラボ、アン・サリーをはじめ、数多くのミュージシャンの作品にゲスト・ボーカルやギタリストとして参加してきた。

 6年ぶり9作目のオリジナル・アルバムとなる『Compass』は、Saigenjiと同世代で、現在のジャズ・シーンで活躍する気鋭のミュージシャンたちと作り上げた、カラフルで意欲あふれる作品。グルーヴィなギター演奏や、スキャットの魅力はさらに進化。スウィンギンな高速ビートのジャズ・チューン「朝と摩天楼」、Saigenjiのスキャットとジャズメンたちのプレイの応酬がスリリングな表題曲「Compass」をはじめ、これまで同様ブラジル音楽を中心に据えながらも、ジャズやソウルなど多彩な音楽を呑み込みながら、その表現はより自由な広がりを獲得した。また、美しい夜明けの情景が広がるバラード「光を待つ人」や、歌謡曲に通じる妖しい湿度を孕んだのボサノヴァ「夜光虫の海」、フォーキーな「帰還」、旅を続けるSaigenjiの日常が垣間見られるようなバラード「Midnight Departure」など、ソングライターとしての深化も感じられる。

 『Compass』を片手に、Saigenjiはポップスの新たな地平を切り拓いていくことだろう。



Saigenji『Compass』

Saigenji
『Compass』

(Happiness Records)


Live Schedule
2018年12月23日(日)沖縄・南城 ガンガラーの谷 Cave cafe (w/Vacation Three)
2018年12月24日(祝)沖縄・那覇 Live Music Bar SOUND M’S
2019年1月13日(日)青森・青森 CRAZY HORSE SALOON


official website
http://saigenji.com

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