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青木慶則──HARCOとしての20年間に区切りをつけ、本名で新たな一歩を踏み出した充実の1stアルバム

2019.01.31

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心の紐だけはきつく結んで

いつでも外へ何も持たずに
飛び出せる支度はできてるかい

白い器を君は見つめる
ほんの一瞬の木洩れ陽に気付けたら
出かけよう
(「支度」より)


 〈HARCO〉という名義で長らく活動してきたシンガー・ソングライター、青木慶則。彼は2017年いっぱいをもってHARCOとしての活動を終了し、2018年から新たな一歩を踏み出した。

 1993年、17歳の時にBLUE BOYのドラマーとしてメジャーデビューした彼は、1997年にHARCOという変名ソロユニットとして活動をはじめた。以降、20年に渡って充実の作品を次々と発表しながら、CMや番組の楽曲制作、歌唱、ナレーションを担当したほか、映画音楽の制作、他アーティストへの楽曲参加など、幅広く活躍してきた。

 2018年に入り、本名の「青木慶則」として再始動。自身のレーベル〈Symphony Blue Label〉を立ち上げ、ファースト・アルバム『青木慶則』を完成させた。


 HARCO名義のラスト・アルバム『あらたな方角へ』は、同時代を駆け抜けた盟友ミュージシャンたちが数多く参加していたが、今回の『青木慶則』ではゲストを一人も迎えず、青木のピアノ弾き語りスタイルで作られた、まさに原点回帰といえる作品となった。

 幼い我が子を見つめる父の視線で綴られた「支度」、彼ならではの華やかポップ・センスが感じられるリード曲「瞬間の積み重ね」にはじまる本作は、生活に根ざしたリリックの中に、表現者としての逡巡や、人生の半ばを越えての憂いや悩み、それでも諦めない夢や希望なんかも透けて見えてきて。これまで以上に青木慶則という「個」を感じさせる。そしてピアノと歌という極めてミニマルな編成だからこそ、ソングライターの非凡さにあらためて気づかされる。またアルバムにはピアノ・インストも2曲ほど収録しているが、アルバム全編のピアノ演奏からは、ジャズやソウル、AORといった、彼が通過してきた様々な音楽が滲み出ていて、聴き手を飽きさせない。

 新たな旅立ちを感じさせる作品であり、また、彼がこの先シンガー・ソングライターとしてどんな展開を見せてくれるのか、期待を高めずにいられない。

火の粉がシャツを焦がすように
心に穴が空いている
曇り空の朝 白く滲んでる

そろそろ引越ししよう
次の僕へ
(「働き方を考える」より)



青木慶則青木慶則』

青木慶則
『青木慶則』

(Symphony Blue Label)


Yoshinori Aoki 1st Album Release Tour
2019年3月7日(木)愛知・今池 TOKUZO
2019年3月9日(土)大阪・梅田 GANZ toi,toi,toi
2019年3月13日(水)東京・吉祥寺 Star Pine’s Cafe

ゲーテ座サロンコンサートVol.345 青木慶則 & Quinka,with a Yawn – 冬の鳥 – 2019
2019年2月2日(土)神奈川・横浜 山手ゲーテ座ホール
w/Quinka,with a Ya

JANUS presents ミナミピアノコンチェルト 第23番
2019年2月6日(水)大阪・心斎橋 Music Club JANUS
w/べべチオ+kimko、まきちゃんぐ


official website
https://www.yoshinoriaoki.com

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