TAP the ROOTS

エスケイプ~短編小説のような詩の世界

2014.08.21

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時代はSNSである。
見ず知らずの誰かと誰かを、ネットワークが繋ぎ、新たな出会いが生まれる。
だが、そんな世界を1970年代の最後に歌った男がいる。
ルパート・ホルムズ。彼が放ったヒット曲「エスケイプ」は1979年の12月22日付けビルボード誌で1位に輝いている。

ルパート・ホルムズは多芸である。
たとえば、ロウワー・マンハッタンのイーストサイドで生まれ育ったコメディアンの生涯を描いたブロードウェイの一人芝居「セイ・グッドナイト・グレイシー」は彼の脚本だ。テレビの脚本も書くし、小説も書く。そして曲も書くのだ。
バーバラ・ストライサンドやジュディ・コリンズといったかつての名女性シンガーだけでなく、ブリトニー・スピアーズにも曲を提供している。そんな彼が書いた「エスケイプ」は気の利いたコメディや短編小説のような世界だ。

主人公の男は、連れ合いとの生活に飽きがきたところ。
彼は「彼女」が寝入った頃、ベッドで新聞を広げる。
すると、投稿欄にこんな手紙が載っていたのだ。

♪もしピナコラーダと、雨に濡れるのがお好きなら
 ヨーガの瞑想などに凝ってなく、単純な方なら
 もし岬の砂丘のような所で、真夜中に愛し合うのがお好きなら
 あながお探しなのは私
 お手紙ください
 一緒に逃げ(エスケイプ)ましょう


主人公は、新聞の「彼女」に手紙を書くことにする。

♪ああ、ピナコラーダは好きだよ。雨に濡れるのも
 健康食品には興味がないが、シャンパンなら少しはね
 明日の昼にでもお会いして、赤いテープを切りませんか
 オマリーズ・バーで落ち合って
 現実的な逃避(エスケイプ)計画を練りましょう


そして彼は、約束の場所で、高鳴る胸を押さえつつ「彼女」を待ったわけだが、そこに現れたのは、長いこと、彼がつきあってきた「彼女」だった、というお話なのだが、エンディングがイカシテるのだ。

「知らなかったよ」と、主人公は彼女に言うのだ。

♪君がピナコラーダを、雨に濡れるのが好きだとは
 潮の肌触りや、シャンペンの味が好きだとは
 岬の砂丘で真夜中に愛し合うことが好きなら
 君こそは、僕が探していた女性さ
 さあ、一緒にエスケイプしようじゃないか♪



ルパート・ホルムズ『パートナーズ・イン・クライム』
USMジャパン

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