TAP the ROOTS

年内の実施が噂される総選挙を前に、ブルースの「アトランティック・シティ」を聞き直す

2014.11.20

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♪フィリーのチキンマンが爆死した♪


ブルース・スプリングスティーンが1982年に発表したアルバム「ネブラスカ」に収録されている「アトランティック・シティ」は、そんな歌詞から始まる。この1行は、新聞の記事タイトルからとられたものだ。

1976年、貧困に喘いでいたニュージャージー州アトランティック・シティは、カジノ合法化を宣言した。その瞬間から、新たな利権を求めてマフィア、ギャングたちがしのぎを削り始めていた。

「フィリーのチキンマン」と呼ばれたのは、フィラデルフィアのギャング団のナンバー2、フィリップ・テスタのことだ。このフィラデルフィア・ギャングは、シシリアン・マフィアの一味だった。彼は、1981年、ダッシュボードに仕掛けられた爆弾により、車もろとも木っ端微塵となったわけである。
その頃のアトランティック・シティの状況を、ブルースは次のように歌っている。

♪厄介ごとは近頃じゃ、州外からやってくる
 地検も安らぐ暇もないほどさ
 遊歩道じゃまた一騒動起きそうだぜ
 賭博委員会のやつらの首も皮一枚ってところだ ♪


アトランティック・シティで暮らす市民にとって、カジノ建設は希望などではなく、新たな厄介ごとだったことがわかる。
そして主人公は、ガールフレンドとふたり、この街から逃げ出す計画を立てる。

♪俺にだって職はあったし、金を貯めようともしたさ
 だが、残ったのは誠実な男には返し切れない債務だ
 だから俺はセントラル・トラスト(中央信用金庫)から
 ありったけの金を引き出し
 コースト・シティ・バスの切符を2枚買ったのさ♪

主人公は、ガールフレンドとアトランティック・シティで待ち合わせる約束をする。

♪ああ、どんなものでも死んでいく
 ベイビー、それは現実さ
 だが、死んだものはいつの日か、復活するんだ
 だから、化粧をして、髪もきれいにしとくんだぜ
 今夜、アトランティック・シティで会おう♪


この歌が悲しいのは、主人公があてのない逃亡劇を企てたわけではないところだ。歌の最後で主人公は、ひとりの男と知り合ったことを彼女に明かす。そして彼に頼みごとをしてみよう、と考えている、と。
おそらく主人公は、逃げようとした厄介ごとの渦に、自ら飛び込んでいくことであろうことを、この歌の最後は暗示している。

日本政府も、カジノ法案を口にし始めている。
お偉いさんの経済政策とやらは「小手先」なことが多い。小手先で、なおかつ自らの利権を生んでくれること。それが彼らの経済政策であることは少なくない。

ブルース・スプリングスティーンは今でも好んでこの曲をステージで演奏し続けている。それはおそらくこの歌の歌詞が今も、リアルだからだろう。




『The Essential: Bruce Springsteen』
Sony

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