「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the ROOTS

新年、新たな気持ちで聴く「ハレルヤ」

2015.01.01

Pocket
LINEで送る

♪ かつてダビデ王が奏で主を賛美した
  秘密の和音があったと聞いたことがある
  あなたには、音楽など大した関心もないだろうがね ♪


新年、あけましておめでとうございます。
今年最初に聞いていただくのは、レナード・コーエンが1984年に発表した「ハレルヤ」です。
若い方々には、ジェフ・バックリーやアレクサンドラ・バークの歌でお馴染みかも知れません。
この歌は、旧約聖書に登場し、様々な詩を詠み、竪琴の名手でもあったとされるダビデ王のエピソードから始まります。

♪ それはこんなふうに
  四度、五度と進んでいく
  短調なら音を下げ、長調であるなら音を上げる
  困惑し王の作りし神を讃える歌
  ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ ♪


新年、詩を詠む人たちは歌会始(うたかいはじめ)をするわけですが、私たち庶民にとって、そのかわりとなるものが年賀状でしょうか。秘密の和音に長調、短調があるように、歌もそれぞれ、様々な表情を持っているものです。

レナード・コーエンの歌う「ハレルヤ」は、愛する女性と別れてしまった主人公と、神から離れてしまった現代の人間を重ね合わせるように物語が進んでいきます。
それは不協和音の響きなのでしょうね。

♪ かつてあなたは教えてくれたではないか
  下の世界で起こりあることを
  でも今となっては何も見せてくれないのだね
  覚えているだろう
  私があなたの中に移り住んだ時
  聖なる鳩も一緒だったこと
  そしてふたりの呼吸そのものがハレルヤだったことを
  ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ ♪


「あなたの中に移り住んだ時」は、主人公が彼女の部屋に移り住んだとも取れるし、セックスという行為のメタファーと考えることもできます。そして、ヨハネに洗礼を受けた時にイエスのもとへと舞い降りた鳩の神話を思い出しますね。
少しだけ、聖書の話を紹介しましょう。

次の話は、お正月について書かれたものです。

<七日の間あなたがたは種入れぬパンを食べなければならない。その初めの日に家からパン種を取り除かなければならない。第一日から第七日までに、種を入れたパンを食べる人はみなイスラエルから絶たれるであろう>


日本のお餅を食べる習慣を彷彿とさせるのが面白いですね。
私たちは、とても似ていますし、とても違っているわけですが、人というのは不思議なもので、似ているから好きになることもありますし、似ているから嫌いになることもあります。
同じように違っているから好きになることもありますし、違っているから嫌いになることもあります。

♪ 神は上の世界にましますのだろう
  だが私が愛から学んだことといえば
  私を撃とうとする人間を先んじて撃つことだった
  夜、聴こえてくるのは
  光を見た、と叫ぶ人の声などではなく
  冷たく、壊れてしまったハレルヤだ
  ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ ♪


「この歌を書くのに、2年かかった」

レナード・コーエンはボブ・ディランにそう語ったといいます。

さて、どんなお正月をお過ごしでしょうか。
最後に、「ハレルヤ」をヒットさせたことでも知られるジェフ・バックリーが「新年の祈り」という詩を書いているので、その冒頭部分を紹介しておきましょう。

恋人よ、忘れてしまっていいんだ
実家で過ごしたストレスだらけのクリスマスのことなんて

恋人よ、脱ぎ捨ててしまっていいんだ
趣味の悪いディスコ用の服のような去年までの重荷なんて
ラリった夜、踊る時のためにとっておけばいいんだよ


新年。新たな気持ちで、歌を聞き直してみてはどうでしょうか。
長調の歌でも。短調の歌でも。。。
よい年でありますように。

大いなる和音の国の元旦


Jeff Buckley – Hallelujah



Leonard Cohen – Hallelujah


Alexandra Burke – Hallelujah

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the ROOTS]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ