TAP the ROOTS

暗く、寒い日々の中でジョージ・ハリスンが待ち望んだもの

2015.01.22

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♪ ほら、太陽が顔を出した
  ほら、太陽が顔を出した
  最高な気分さ ♪


イギリスの冬は暗く、長い。
だからこそ、春の日差しを待ちわびるのだ。

ジョン・レノンも「アイ・アム・ザ・ウォラス」の中で、「イングリッシュ・ガーデン(英国式庭園)に座り、太陽が顔を見せるのを待っている」と歌っている。
そう、ジョンがそう歌ったように、その時、ジョージ・ハリスンはギターを手に、庭にいた。彼の家ではない。親友エリック・クラプトンの家の庭である。

1967年。ビートルズのメンバーは冬の空のように鬱屈とした日々を過ごしていた。
彼らを育て上げたマネージャー、ブライアン・エプスタインが突然この世を去ってからというもの、メンバーは音楽のことではなく、会計やビジネスのことで頭を悩ますことが増えていた。

ジョージはそんな日々から逃げるようにして、エリック・クラプトンの家を訪れていたのである。
ドキュメンタリー映画『ザ・マテリアル・ワールド』の中で、クラプトンはこう語っている。

「あれは、美しい春の朝のことだ。4月に入ってからのことだと思う。私とジョージは、ギターを携えて庭を散歩していた。いつもの私なら、そんなことはしないんだが。その状況を作り出したのはジョージだっていうことさ。彼は魔法を使う男なんだ」

ふたりは庭に腰をおろした。

「すると、太陽が輝き始めたんだ。美しい朝だった。そしてジョージはオープニングのメロディーを口づさみ始めたんだよ」

♪ ほら、太陽が顔を出した
  ほら、太陽が顔を出した
  最高な気分さ ♪


「私は、あの歌がこの世に生を受けた瞬間を目撃したのさ」

クラプトンはそう回想している。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」の演奏部分が(クラプトンの在籍していた)クリームのヒット曲「バッジ」に似ているのには、理由がある。「バッジ」は、ジョージがクラプトンと一緒に書いた曲だったのである。

♪ リトル・ダーリン
  長く寒く孤独な冬だった
  リトル・ダーリン
  君がいなくなってから何年も過ぎたように思える ♪


リトル・ダーリンは、「太陽」のことだ。

♪ リトル・ダーリン
  みんなの顔に笑みが戻っていく
  リトル・ダーリン
  君がいなくなってから何年も過ぎたように思える ♪


この節では、リトル・ダーリンは「笑顔」のことだ。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」は、ビートルズ最後のレコーディングとなったアルバム「アビーロード」に収録されることになる。
ジョージは、バンドにも春がやってくることを望んでいた。
だが、ビートルズのメンバーに笑顔が戻ることはなかったのである。

寒い季節。
寒い時代。
「太陽」が、「笑顔」が訪れる日を僕らも待っている。


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