TAP the ROOTS

シカゴのロバート・ラムがアメリカ独立記念日にセントラル・パークで目撃したもの

2017.07.04

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♪ 土曜日の公園
  あれは確か、7月4日
  土曜日の公園
  あれは確か、7月4日のこと ♪


その時、シカゴのメンバーは次回作『シカゴⅤ』の録音のため、ニューヨークに滞在していた。アルバム用の楽曲はまだ揃っていない。ロバート・ラムは気分転換にセントラル・パークへと散歩に出かけた。そこでロバートは独立記念日(7月4日)特有の、喜びに満ちた人々の姿を目の当たりにする。

♪ 人々は語り合い、笑い
  アイスクリーム売りの男は
  イタリア語の歌を歌っていた
 (意味不明の歌詞)
  意味がわかるかい?(ああ、わかるさ)
  長い間、待っていたんだ
  土曜日をね ♪


メンバーのもとに帰ってきたロバートが、興奮気味に公園の様子を話し始めると、サックス奏者のウォルター・パラゼイダーは彼にこう言ったのだ。
「それほど楽しかったのなら、曲にすればいいじゃないか!」
 ロバートは早速、曲作りにかかった。

メロディーのイメージは、ビートルズの「ユー・ウォント・シー・ミー」から拝借した。そして彼が見たとおりの情景を歌詞にした。
ロバートは実際、イタリア語の歌を耳にしたのだろうが、その意味はわからなかった。だが、その雰囲気をそのまま伝えることにした。
楽譜には、次のような説明書きがなされた。

<即興で作ったイタリア語の歌詞>


意味不明なイタリア語。だが、その場に居合わせた者には、その歌の楽しさは伝わってくる。だからこそ、「意味がわかるかい?(ああ、わかるさ)」なのだ。
ところが、毎回、即興のイタリア語風歌詞を考えるわけにもいかない。そこで結局、歌詞は次のように落ち着いた。

♪ Eh Cumpari, ci vo surnari
 (おい、みんな、何の音だい) ♪


歌詞は、イタリアの童謡から拝借したようである。

♪ 公園でのまた別の日
  7月4日だと思うに違いない
  公園でのまた別の日
  7月4日だと思うに違いない ♪


ロバートは再び、セントラル・パークを訪れる。
そこには前回同様、楽しげな人々がいるが、今の世界の変革を歌う男が登場する。

♪ 人々は踊り、心から微笑み
  ギターを弾く男は
  僕らに歌っていた
  彼に世界を変えさせてやれるだろうか
  そう思うかい(ああ、思うさ)
  長い間、ずっと待っていたんだ
  この日をね ♪


時は1971年。アメリカはベトナム戦争で傷ついていた。

♪ ブロンズの男は今も彼ならでは言い方で
  ストーリーを物語る
  いいかい、子供たちよ
  すべてが失われたわけではない
  すべてが失われたわけではないのだ ♪


hanschristiananderson

ブロンズの男は、セントラル・パークに置かれた銅像かも知れないし、かつてロバート・ラムが冗談交じりに語ったように、ギタリストのテリー・キャスのことかも知れない。テリー・キャスは当時、ブロンズ像のように日焼けをしていたというのだ。
ブロンズの男の正体はわからないが、その言葉は、ジョン・ミルトンの「失楽園」からとられたものである。

<すべてが失われたわけではない。まだ不屈の意志がある>


エデンの園を追われたアダムとイブの物語。
約束の地にやってきたはずのアメリカの人々もまさに、アダムとイブのような気分だったのだろう。そしてロバートの目に映った土曜日のセントラル・パークは、エデンの園そのものだったのである。




(このコラムは2015年3月5日に公開されたものです)

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