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“ニューファミリー”を静かに宣言したケニー・ロギンスの優しい歌声

2015.06.04

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♪ お金はないけど
  君を心から愛しているんだよ
  すべては愛の鎖で
  つながれているのさ
  朝目を覚まし、君がいると
  喜びの涙が浮かぶ
  そして君は
  すべてはうまくいくと
  言ってくれるのさ ♪


1971年。1960年代の革命と変革に疲れ切ったアメリカにそよ風が吹くように、優しい歌声が木霊した。
アン・マレーの大ヒット曲としても知られるロギンス&メッシーナの「ダニーの歌」である。
政治に疲れた若者は、恋愛に、新しい家庭生活に癒しを求めていた。

ロギンス&メッシーナのファースト・アルバム『シッティン・イン』には、「プー横丁の家」という名曲も収められているが、こちらもアメリカの古き良き時代への回帰を思わせる歌だ(詳しくはこちらのコラムで)。

アン・マレーやヴィッキー・カーに歌われたことからもわかるように、ダニーという青年が主人公のこの歌は女性たちに支持された。女性らしい、優しさの時代の幕開けである。

♪ 僕を見るとみんな微笑んで
  ラッキーなやつだと言うのさ
  僕らふたりはまだ始まったばかり
  男の子が欲しいと思ってるのさ
  彼はきっとふたりに似て
  鳩のように自由で
  愛を信じてる
  きっと太陽も明るく
  照らしてくれるはずさ ♪


タイトルのダニーという名前は歌詞の中に一切登場しない。ダニーというのは、ケニー・ロギンスの兄、ダン・ロギンスの愛称だ。
ケニーがまだ18歳の頃、兄ダンと奥さんの間に初めての子供が生まれた。
ケニー同様、音楽が好きで、大の仲良しだった兄に贈った歌が「ダニーの歌」だったのである。



ケニー・ロギンスのコンサートでは、この歌がコーラス部分に差し掛かると、ケニーは歌うのを止め、聴衆の合唱に微笑みながら耳を傾けるのだ。

♪ お金はないけど
  君を心から愛しているんだよ
  すべては愛の鎖で
  つながれているのさ
  朝目を覚まし、君がいると
  喜びの涙が浮かぶ
  そして君は
  すべてはうまくいくと
  言ってくれるのさ ♪




そしてこの歌は、結婚式の定番ソングとなっていく。
ジューン・ブライド。
6月がジューンというのは、ローマ神話の女神ユノ(ジュノー)からきている。ユピテル(ジュピター)の妻ユノー(ジュノー)が結婚生活の守護神だということから、6月に結婚すると女神に祝福されると信じられるようになった、という話がある。

ちなみに、5月はメイ。こちらは豊穣を司る女神マイアからきているのだが、メイには「もしかしたら」という意味があるのは意味深だ。
春に出会った男女が、「もしかしたら」という運命の岐路、5月を乗り越えて6月に結ばれるわけだ。

6月は梅雨で、ホテルの回転が悪いから、ビジネス上の理由でジューン・ブライドを流行らせた、なんていうゲスな説は少しの間だけ忘れていよう。
今月は、ラヴ・ソングを紹介していきたいと思っている。


ロギンス&メッシーナ『シッティン・イン』
SMJ

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