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世界を旅し続けるストリート・ギタリストが奏でる壮大な叙事詩

2015.08.27

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♪ 私は誰か?
  言葉にはできない
  目の前の季節は
  日々刻々その姿を変えていく
  詩人、僧侶、暗殺者、泥棒
  私の魔術の前に
  人々は不信を抱くこともない ♪


ロシア出身のギタリスト、Estas Tonne。名前の読み方はわからない。ここでは英語の読み方である「イースタス」と呼ぶことにする。
イースタスがロシアを離れたのは15歳の時だ。理由は語られていない。
少年時代からクラシック・ギターの素養はあったようだが、今の彼のギター・スタイルは、彼の旅の遍歴がもたらしたのだろう、と想像するしかない。

♪ 私は誰か?
  ただの嘘の束だ
  私はカードの塔にして
  吟遊詩人の物語だ
  私は愚か者の戯れにして
  輝く宝石だ
  私は飴で覆われた
  大空にそびえ立つ城だ ♪


イースタスはヨーロッパを通り、イスラエルまで足をのばした。インドへも足を運んだ。
現在はヨーロッパをホームグラウンドにしているが、旅は日々、続いている。

街角に現れると、イースタスはギターを取り出す。そして様々なサウンド・エフェクト、アタッチメントをセットする。徐々に人々が集まってくる。
ギターはアンプに繋がれ、イースタスがエコーをかけてギター弦をつまびいた瞬間、街角は彼の世界となってしまうのである。



観衆の中には、小さな子供の姿も見える。大人も子供も、じっとイースタスの音に耳を傾け、身を任せている。

「この体験の後、何かが変わっているだろう」

預言者のようにイースタスは言うと、ギターを弾き始める。

♪ 偽りの偶像を叩き壊し
  真実の源を解き放つのだ
  探すのをやめ、見つけるのだ
  聞くのをやめ、耳にするのだ
  見るのをやめ、ただ観るのだ
  あなたの意思のまま行う
  それ以外、すべきことは何もない ♪


その風貌から、ヨーロッパの人々はイースタスにイエス・キリストの面影を探す。
 
「Who am I?」は、2008年に発表された彼の『ボヘミアン・スカイズ』というアルバムに収録されている、彼としては珍しい詩がついた楽曲だが、昨年、映像作家が素晴らしいビデオを仕上げ、公開した。
 
私は誰か? 大自然が主人公となり、壮大な物語が展開されていく。。。

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