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ジョージ・ハリスンと古代中国の教えをつなぐものとは?

2015.10.15

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2010年、ロンドン郊外、ウェイブリッジの広大な敷地内にある邸宅を改装しようとした建築業者が庭の芝生を掘り起こしたところ、革の袋に入ったガラス瓶の残骸を見つけた。
残念ながら、瓶は風化が激しく、中に何が入っていたのかはわからなかった。
だが、この出来事がニュースになったのは、その邸宅に1968年まで暮らしていたのがジョン・レノンだったからである。

1968年。ジョージ・ハリスンと共に瞑想修行のためインドへと渡る直前、ジョンは大量のLSDを庭に埋めていたのだ。
「僕らはすでにLSDを卒業し、愛こそすべて、の時代に入っていた」と、ジョージ・ハリスンは自伝「アイ・ミー・マイン」の中で語っている。

<瞑想>は、確かなブームとなっていた。
ニクソン元米大統領にインタビューし、ウォーターゲート事件の謝罪の弁を引き出したことでも有名なイギリスの司会者、デービッド・フロストの番組でも「瞑想特集」が組まれた。
マハリシ・ヨギ・マヘシのインタビュー映像が流され、コメンテイターとして、ジョンとジョージが出演した。



その時、観客として収録スタジオにいたのが、アーサー・ウェイリーである。
ロスチャイルド家を血縁に持つこの東洋学者は、サンスクリット語、日本語、中国語に通じていた。「源氏物語」を英訳し、イギリスに紹介したのがウェイリーだった。

ふたりが知り合ってすぐ、ウェイリーからジョージのもとに手紙と一冊の本が届いた。
本のタイトルは「ランプス・オブ・ファイアー」。ウェイリー自身が翻訳したものである。
そしてウェイリーは手紙の中で、次のように直接的な指示をジョージに出していたのである。

「あなたにはこの本の66ページ、47番目の詩はいかがでしょう」

♪ ドアの外へと出かけて行かずとも
  この地上のことは知ることができる
  窓の外を見なくとも
  天への道は知ることができる ♪


ジョージ・ハリスンは、ウェイリーが手紙の中で記した東洋の詩を、そのまま歌詞にしたのである。

ジョージが英語で歌ったこの詩の原文は次のようなものだ。

 不出戸 知天下 不闚牖 見天道

 戸をいでずして 天下を知り
 窓より窺わずして、天道を見る


そう、ウェイリーがジョージに送ったのは、老子の「道徳経」だったのである。

♪ 旅することなく到着し
  見ることなく目にし
  為すことなくするのだ ♪


 是以聖人 不行而知 不見而名 不爲而成

 是をもって聖人は行かずして知り
 見ずして名(あきら)かに 為さずして成る


rousi

ジョージは当初この曲を、ジェーン・バーキン主演の映画『不思議の壁』のサントラに使おうと考えていた。だが、この曲をジョンとポールが絶賛したのである。
そして「ジ・インナー・ライト」はシングル「レディ・マドンナ」のB面に収録されることになる。

the-beatles-the-inner-light-parlophone-6

最新のCDアルバムには、この曲の歌詞が老子の書いた文章であることが記されている。



P.S.
ところでジョージは何故、素直に古代中国の教えを歌詞にしようとしたのだろうか。
実は、老子はボーガナタルという名の南インドタミル出身のヨガ行者で、後に中国に渡って老子と呼ばれた、とインドでは言い伝えられているのである。
ジョージは、サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツクラブ・バンドのジャケットに、インドの伝説的ヨガ行者ババジを登場させている。
そしてボーガナタルこそは、ジョージの敬愛するババジのグルだったとされているのである。

babaji


ビートルズ『パスト・マスターズ』
「ジ・インナー・ライト」収録(UNIVERSAL)

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