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あんたはまだ何も見ちゃいないの
ブ、ブ、ブ、ベイビー
あんたはまだ、な、な、何も見ちゃいないのよ
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1974年にビルボード誌のシングルチャート1位となったバックマン・ターナー・オーバードライヴの「You ain’t seen nothing yet」には、そんな印象的なフレーズが登場する。
それはたとえば、天才・山下清が「ぼ、ぼ、僕わだなぁ」というような感じだ。初めて聴いた時は、な~んだ?と思うのだが、気がつけば癖になっている。不思議な曲である。
この曲を書いたのは、バックマン・ターナー・オーバードライヴのフロントマン、ランディ・バックマン。ランディは1965年にカナダで結成されたゲス・フーのオリジナル・メンバーで、1970年には「アメリカン・ウーマン」をチャートのトップに送り込んでいる。
ゲス・フー(誰~れだ)というのも、ふざけたバンド名である。しかし、このバンド名がきっかけなのか、「You ain’t seen nothing yet」に盗作疑惑がもちあがる。
イギリスのバンド、ザ・フーの「ババ・オライリー」のパクリ疑惑である。ギターリフがそっくりで、コード進行も。。。というわけだ。
そして、例の吃音風のコーラスが、ザ・フーの「マイ・ジェネレイション」を想起させるという話まで持ち上がってしまう。
だが、この特徴的なフレーズは、ある日のサウンドチェックの時に生まれたものだった。
バックマン・ターナー・オーバードライヴというバンド名は、バックマンとターナーというメンバーの名字から取られている。結成時のメンバーは4人だが、ベースのフレッド・ターナーを除いて、残り3人はバックマン、そう、ランディの兄弟だったのである。そして彼らのマネージャーもまた、兄弟のゲイリー・バックマンが務めていた。
その日、ゲイリーは気分が優れなかった。言語障害があり、普段から口数が多いほうではなかったが、いつもに増して、塞ぎ込んでいるように見えた。そんなゲイリーを見て、ランディはサウンドチェック用のマイクに向かって、歌ったのである。
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お前はまだ何も見ちゃいないのさ
ブ、ブ、ブ、ベイビー
お前はまだ、な、な、何も見ちゃいないだよ
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ランディは、ゲイリーに笑ってほしかったのである。
そして、このサウンドチェックの音が偶然、マーキュリー・レコードの幹部の元に届くことになるのだ。アルバムに入れるなら、普通に歌うつもりで、ランディはいた。だが、待っていたのは、こんな言葉だった。
「歌い直すことはない。このまま、行くぞ」