TAP the ROOTS

69年の夏、交錯する様々なメタファー

2016.08.25

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 最初のギターは
 安物の雑貨屋で買った
 指から血がにじむまで弾いたものさ
 あれは69年の夏のこと

 ブライアン・アダムスの「思い出のサマー」は、ギターを手に入れた夏の描写から始まる。1959年生まれのブライアンは1969年当時、9歳だった計算になる。彼は早熟だったのだろうか?

 この曲をブライアンと共作したのが、ジム・ヴァランスだ。エアロスミスの楽曲などでも知られる彼は、この1969年という年について、次のように語っている。

「まず感じたのは、ジャクソン・ブラウンの『ランニング・オン・エンプティー』だね。あの歌には、♪69年、僕は21だった♪という歌詞が出てくる。歌詞を書く時に無意識のうちに、あの69が出てきたんじゃないかってね」



 ジム・ヴァランスはもうひとつ、仮説を立てている。
 今度は「夏」のほうだ。

「夏については、『サマー・オブ・42』(おもいでの夏)という映画の影響があったのかも知れない」

「おもいでの夏」は、思春期の少年のひと夏の経験を描いた1971年のアメリカ映画である。思春期の少年と夏。このふたつのキーワードから連想される言葉は<セックス>である。


 ああ今思い返しても
 あの夏は永遠に続くように思えた
 もし選べるなら
 いつもあの場所にいたいと思う
 人生最高の日々に

 ブライアン・アダムスは、そのキャラクターもあるのだろうが、正面を切ってセックスについては歌っていない。だが、インタビューではこう語っているのである。

「シンプルだよ。夏とメイクラブを振り返った歌さ。僕は、69という数字は、実際の年ではなくて、メイクラブのメタファーなんだよ」

 歌い始めの歌詞でギターの意訳した言葉は、原詞では、シックス・ストリングス、6弦という意味である。

「スペインでこう言われたことがあったよ。最初のギター(six strings)ではなく、最初の夢精(sex dream)って聴こえるって(笑)」

 ヴァランスの説明では、この歌詞は、フォーリナーの「ジュークボックス・ヒーロー」の影響だが、その他にも、この歌には過去の名曲たちの残像が散りばめられている。69は、美しき過去の象徴であり、名曲のメタファーなのだ。


 ママのポーチに立ち
 永遠に待つと言ってくれた君

 のポーチは、スプリングスティーンの「レーシング・イン・ザ・ストリート」のシーンを彷彿とさせるし、


 君がこの手を握ってくれた時
 僕にはそれが「ナウ・オア・ネヴァー」だと
 わかっていたのさ

 は、ビートルズの「抱き締めたい」とエルビスの「ナウ・オア・ネヴァー」である。


 ああ、そうさ
 あの69年の夏
 ああ
 あれは69年の夏だった
 僕とベイビーの、69

 夏の終わりに、それぞれの夏を思い返すのも悪くない。



Bryan Adams『Reckless』
A&M

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