TAP the ROOTS

名プロデューサー、ナイル・ロジャースによって歌詞を変えられたINXSの「オリジナル・シン」

2017.02.09

Pocket
LINEで送る

 1960年代がアメリカの若者にとって革命の10年だったように、オーストラリアの若者にとっては、1970年代は新しい季節だった。若者たちは、大学近くの安アパートで共同生活を始め、親の世代の価値観と日々、戦っていた。
 INXSのアンドリュー・ファリスとマイケル・ハッチェンスは、1984年に発表された「オリジナル・シン」にそんな時代の熱気を持ち込もうとする。そのキーワードがオリジナル・シン=原罪だった。
 原罪とは、聖書の創世記に登場する重要なキーワードである。アダムとイブは、蛇にそそのかされ、この木からは食べてはならない、と言われた木の実(リンゴとも言われている)を口にし、楽園から追放される。それが原罪とされるわけだ。

adam-eve-snake

 だが、人間に自由意志はないのだろうか?
 常に親の言う通りに生きなければいけないのだろうか?
 それは誰もが思うことである。
 そしてまさに、INXSのメンバーだけでなく、当時のオーストラリアの若者たちは新しい価値観を求めて日々を過ごしていたのである。


夢を見続けるんだ
ホワイト・ボーイ
夢を持ち続けるのさ
ホワイト・ガール

 コーラス部分の歌詞は、最初、そう書かれていた。
 だが、プロデューサーのナイル・ロジャースは冷静に、バンドのメンバーに伝えた。
「変えた方がいい」

 ナイル・ロジャースは当時、大ヒットを重ねていたプロデューサーであり、「おしゃれフリーク」の大ヒットで知られるシックのギタリストだった。シック結成前は、アポロ・シアターの音楽監督をつとめていた。アメリカ進出後、さほどの成功を収めていなかったINXSにとって、ロジャースはとても逆らえる相手ではなかった。

「ホワイト・ボーイとホワイト・ガールではなく、ブラック・ボーイとホワイト・ガールでは駄目なのかね?」とナイル・ロジャースは言った。
「私自身、異人種間のカップルから生まれているからね。このメッセージがどんな大きな意味を持つか、わかるつもりだ」

 確かに、1980年台初頭といえば、今以上に白人と黒人のカップルはタブー視されていた。そしてバンドはプロデューサーの意見を取り入れ、歌詞を書き換えた。そして。。。「原罪」という言葉はより深い意味を持つように響いたのである。



 ところで。
 ナイル・ロジャースが今、この曲をプロデュースしたら、どんな注文をつけるだろうか。
 少なくとも、今のアメリカ大統領なら、元の「ホワイト・ボーイとホワイト・ガール」に戻せ、という大統領令を出しそうな気がするが。。。


Inxs『The Swing』
「オリジナル・シン」を収録した4thアルバム(Universal)

Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the ROOTS]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑