TAP the ROOTS

南北を隔てる線、メイソン・ディクソンを舞台にした歌

2017.04.19

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私たちはフィラデルフィアへと
セイルしていく
石炭の町タインを遠く離れ
フィラデルフィアへと
セイルしていく
線を引くため
メイスン・ディクスン線を



 マーク・ノップラーがダイアー・ストレイツ解散後、2000年に発表したソロとしてのセカンド・アルバムのタイトル曲「セイリング・トゥ・フィラデルフィア」は、ふたりの英国人がアメリカ合衆国の南北境界線を引く物語である。この物語は、アメリカの小説家、トマス・ピンチョンが1997年に発表した小説「メイスン&ディクスン」にインスパイアされて書かれたものだ。



 セイルした、と訳したのは、いい日本語が思い浮かばなかったからである。
 航海というイメージなのだが、彼らが測量用に乗っていたのは、アルバム・ジャケットからもわかるように、飛行船である。航空していく、なのだが、なんかしっくりとこない。

 さて。1763年から1767年にかけてこの線の測量を行ったふたりの名前、チャールズ・メイスンとジェレマイア・ディクスンにちなみ、この境界線は<メイスン・ディクスン線>と呼ばれるようになる。



 人為的に引かれたこの線だが、その後、まさにこの線はアメリカ人にとって国境のような象徴的な存在となる。
 たとえば、ジョニー・キャッシュは「ヘイ・ポーター」の中で次のように歌っている。


ヘイ、ポーター
ヘイ・ポーター
今、何時だい?
メイスン・ディクスン線を越えるまで
あとどのくらいだい?

 一刻も早く南部の大気を吸い込みたいとジョニー・キャッシュは歌うのである。



 だが、境界線があるゆえに、片側に住む人間は、もう片側に住む人間と争うこともある。
 実際、この境界線を引いたふたりの英国人は、勝手に他人の土地に線を引くという行為をする中で、様々な葛藤を経験するのである。
 この歌がとても魅力的なのは、マーク・ノップラーがクールなジェレマイア・ディクスンのパートを担当し、ナイーヴなメイスンのパートをジェイムス・テイラーに任せたことである。

 今日も、国境線をめぐって人々は争っている。
 いつか、誰かが、人為的に引いた線をめぐって。





Mark Knopfler『SAILING TO PHILADELPHIA』
Warner

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