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彼女の背中に永遠の愛を彫った男の歌

2018.05.03

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真実の愛はけっして消えることはない
真実の愛はけっして消えることはない。。。

 ポップ・ソングの中にはさまざまな職業の主人公が登場する。
 だが、タトゥーを彫る男が主人公という歌は珍しい。
 季節が一気に変わり、半袖姿で行楽地を歩く人が増えてきたこのゴールデン・ウィーク。今回はマーク・ノップラーが2007年に発表した『キル・トゥ・ゲット・クリムゾン』の冒頭に収録されている「トゥルー・ラヴ・ウィル・ネヴァー・フェイド」を紹介しよう。

 主人公は観光地の埠頭で、刺青の彫師をしている。
 そこには、いろいろな理由で、人々が刺青をしにやってくる。
 彼は、望みの絵柄と言葉を彫っていく。

 そして彼は彼女のことを思い出す。
 彼女のことを。
 彼女の背中に彫った刺青を。
 ふたりの愛を誓って、彼はこう彫ったのだ。

<真実の愛はけっして消えることはない>

 だが、永遠などないことは、彼の元にやってくる客たちが教えてくれる。
 刺青を入れにくる客がいるかと思えば、彫った刺青を消しにやってくる人間も多いのだ。
 それでも彼は、自分が彫った刺青と彼女のことを考えるのである。


真実の愛はけっして消えることはない
真実の愛はけっして消えることはない。。。

 目の前を、観光客用のスチームボートが通り過ぎていく。
 そして彼は、刺青を消したいという客から逃げるように、そのスチームボートに乗ってその場から逃げたい気分になるのだ。

 マーク・ノップラー自身は、煮詰まると赤いバイクを走らせる。
 この歌を書く少し前にも、彼はバイクで事故を起こしているが、バイクに乗ることはやめる気がしない、と彼は語っている。

「それは私にとって、わずかばかりの自由なんだ。もしくは、自由という幻想なのさ」



Mark Knopfler『Kill to Get Crimson』
Warner


(このコラムは2017年5月4日に公開されました)

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