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エイジャと名付けられた娘とフリート・フォクシーズ

2017.09.14

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 グレッグ・ペックノールドはシアトルのミュージシャンだった。1960年代にはファゾムスというソウルフルなバンドを率いていたが、大した成功は果たせなかった。
 だが、彼はいつも音楽を愛していた。
 そして娘が生まれると、その思いを名前に託そうと思い立った。
 Aja(エイジャ)。
 彼は、お気に入りだったスティーリー・ダンのアルバム・タイトルを娘に名づけた。

 『Aja(エイジャ)』は、1977年にスティーリー・ダンが発表した、彼らにとってもっとも成功した6作目のアルバムである。
 アルバムのジャケットには日本人モデル、山口小夜子が起用された。スペルは違うが、明らかに「エイジャ」は、アジアを意識していた。
 アジアを意識したのは、ドナルド・フェイゲンだった。彼は東洋思想に、そして東洋の女性のエキゾチックさに関心を持っていた。そして彼は思い出したのである。確か、Ajaという名前だったはずだ。。。
 ドナルド・フェイゲンが思い出したのは、高校時代の友人が結婚した韓国人女性の名前だった。高校時代のクラスメイトは、韓国の米軍基地で任務についていた時、韓国の女性と結婚していたのである。

 アルバムのタイトル・トラック「エイジャ」には、グレッグ・ペックノールドがため息をつくほどのミュージシャンたちが参加していた。
 ギターには、ラリー・カールトン。
 ベースには、チャック・レイニー。
 ピアノには、ジョー・サンプル。
 テナー・サックスには、ウェイン・ショーター。
 バック・ボーカルには、ティモシー・シュミットが参加していた。



 それから約30年後のことである。
 シアトルのインディー・レーベル<サブ・ポップ>から、バンドがデビューする。ニルヴァーナが巣立った名門レーベルからデビューしたバンドの名は、フリート・フォクシーズ。アコースティックで美しいサウンドと、ビデオ・クリップの美しさで絶賛されることになった。
 その魅力は、大作クリップ「シュライン/アーギュメント」を見ていただければ、納得できるだろう。



 このバンドのマネージャーこそ、グレッグ・ペックノールドの娘、エイジャ・ペックノールドだった。そしてバンドのフロントマンは、エイジャの弟、ロビン・ペックノールド。ビデオのプロデュースはロビンの兄、ショーンなのである。
 興味深いのは、ロビンが日本の小説やアニメの大ファンだということである。
 グレッグ・ペックノールドがまいた「エイジャ」という種は、子供たちの中で見事、花開こうとしている。

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