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クイーンの名曲「キラー・クイーン」に潜む甘い罠

2017.12.21

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「この曲は、完璧なポップソングであり、フレディが書いた偉大な曲の一つに数えられるだろう。そして私も、あのようなギターソロを弾けたことを光栄に思っている」

 2008年、クイーンのギタリスト、ブライアン・メイはQマガジンのインタビューで、彼らの初期のヒット曲「キラー・クイーン」について、そう語っている。
 クイーンにとって3枚目のアルバムとなる「シアー・ハート・アタック」(1974年)に収録されることになるこの曲は、日本での彼らの人気を決定づけ、初来日には多くの少女たちが歓声をあげたものだった。
 だが、この歌は少女たちが熱狂するような歌ではなかった。


小奇麗なキャビネットにはモエ・シャンドン
ケーキでもお食べなさい、と彼女は
マリー・アントワネットのように言う


「キラー・クイーン」の冒頭でそう歌われる彼女は、フルシチョフやケネディでも拒むことができない魅力の持ち主である。
 その正体について、作曲者のフレディ・マーキュリーはニュー・ミュージカル・エクスプレス誌に対して、次のように語っている。

「あの曲は、高級娼婦について書いたものだ。エレガントな女性でも、娼婦になるということだよ。もちろん、聴く人が自由に解釈してくれて構わないのだけれどね」

 いつの時代でも、シャンパンは高級の代名詞なのだろうか。「ホテル・カリフォルニア」の女主人がピンク・シャンペンを愛したように、キラークイーンは飾り棚にモエ・シャンドンを置いている。
 そして「ケーキでも。。。」と言うのである。
「ケーキでもお食べなさい」というのは、食糧難で今日食べるパンにも困っていた民衆に対して、マリー・アントワネットが言ったとされる言葉である。
「ケーキ」と英訳された言葉は、フランス語では、ブリオッシュ。ケーキではないが、通常のバケットより高価だということだろう。

 マリー・アントワネットは、1755年11月2日、神聖ローマ皇帝フランツ1世とオーストリア女大公マリア・テレジアの間に、ウイーンで生まれている。当時のヨーロッパでは、王家同士の政略結婚がさかんに行われていた。そしてマリー・アントワネットも、後のフランス皇帝ルイ16世のもとに嫁ぐことになる。だが、革命の波に呑み込まれるようにして、彼女はギロチン台に向かうことになるのである。
「ケーキでも。。。」という言葉は、マリー・アントワネットが語ったものではないことが、今ではわかっている。だが、革命の波は、皇帝と王妃を悪者に仕立てる必要があった。今でいうところの、フェイク・ニュースである。

 フルシチョフやケネディーに対して、どんな女性が近づいていったのかは、わからない。だが今日でも、ハニー・トラップは仕掛けられ、フェイク・ニュースによる情報戦は過熱する一方である。


彼女はキラー・クイーン
火薬にして、ゼラチン
レーザー光線つきダイナマイト
君の心を吹き飛ばすこと
保証付きだ


 我が国の政治家、役人には、改めてこのクイーンの名曲を聴いてほしいものである。


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