last resort

TAP the ROOTS

ラスト・リゾート~楽園の正体

2016.01.23

「ラスト・リゾートは今でも僕が好きな曲のひとつだ」

ドン・ヘンリーがそう語ったのは1987年、ローリングストーン誌上でのことだ。その理由として彼は「今はあの頃以上に環境について考えるようになったから」と語っている。「人間というのは、この地球上で唯一、自らの住む環境を破壊しうる生き物だってことだよ」

この歌はアメリカ東海岸北部の都市、プロヴィデンスから始まる。

providence2

大航海時代の面影を残すその土地から「彼女」は、 
希望と夢を詰め込み、
何かから逃れるように、
かつて彼女の先祖たちが海を渡ってきたように、
旅に出ることを決意する。
彼女の目的地が「Last Resort」だ。
そこでは人々が微笑み、
その土地をかくも愛した原住民について語っている、という。

物語が進んでいくと、彼女の出身地であるプロヴィデンスは、彼女が目指すラストリゾートと正反対の場所であるということになるのだが、実は、プロヴィデンスこそは、彼女の先祖たちにとって「ラストリゾート」だった場所なのである。

プロヴィデンス。
その意味は「神の摂理」。
1636年、ロジャー・ウィリアムスが「神の慈悲深き摂理により」この土地を見つけ出した、として名づけた土地だ。
ロジャー・ウィリアムスは1603年にイギリスで生まれた神学者。
彼は「良心の自由」を求めてアメリカ、ボストンへ渡る。
だが、ボストンの入植者たちとの確執が原因で、ロード・アイランドへやってくることになる。
ロジャー・ウィリアムスは理想に生きようとしたのだ。
彼は原住民であるネイティブ・インディアンとの共存を目指しただけでなく、1652年には、どこよりも早く奴隷制度を違法とした。

Roger_Williams

ところで、そんなウィリアムスが家庭教師として語学を教えたひとりの少年がその後、叙事詩の名作を残すことになる。
「失楽園」を書いたジョン・ミルトンである。

1970年代。
イーグルスの目の前に広がるアメリカは、楽園(パラダイス)を失った人たちで溢れていた。
「Last Resort」が収録された『Hotel California』というアルバムは、アメリカの国鳥である鷲が、楽園を追放されたアダムとイブを俯瞰しながら飛んでいるように響くのである。

彼女はプロヴィデンスからやってきた
ロードアイランドにある
旧世界の影が重くのしかかる町だ
彼女は避難するように
希望と夢をバッグに詰めた
海を渡った父親と同じように

いつも人々が微笑んでいる場所があると彼女は耳にした
人々はネイティヴたちの生き方について
いかに彼らが大地を愛しているかについて話していた

人々はあらゆるところから大分水嶺を目指して集まった
そこで身を立てようとした者もいたし、身を隠そうとした者もいた

気晴らしにでもと混み合ったバーへ繰り出すと
誰もが待ち切れずに声をかけてくる
「そっちはどんな具合だい?」

人々はそこをパラダイスと呼ぶが
僕には何故かわからない
街がハイになっている陰で、誰かが山を削っているのだ

それから冷たい風が砂漠を吹き抜け
西海岸の渓谷を通り、マリブ海岸へと向かった
そこでは小奇麗な人々が遊戯に興じ
権力に飢えていた
そのことでネオン街には明かりが灯り
仕事も生まれていた

一部の大金持ちがやって来て大地を陵辱したが
彼らが捕まることはなかった
醜い家を建てまくり、キリスト教徒が買っただけだった

彼らはそれをあるべきパラダイスだと言うけれど
くすんだ太陽が海に沈んでいく様を眺めていただけだ

君は全部を放り出してラハイナに航海に出ることだってできるのさ
その昔、宣教師たちがしたように

彼らはネオンサインまで持ち込んだ
「イエスは来たれり」
白人の責務を下ろし
白人の支配を持ち込んだのさ

グランドデザインを描くのは誰なのだろう
何が君のもので何が僕のものなのだろう
もうニューフロンティアなどないのだから
僕らはここに作らなければならないのさ

僕らはその終わることなき要求に満足し
血まみれの行為を正当化する
運命の名の下に
神の名の下に

そして君は日曜の朝、奴らの姿を見るだろう
彼らは立ち上がり、天国の素晴らしさを歌うのさ
それをパラダイスと呼ぶのだろうが
僕には何故かわからない
君がどこかをパラダイスと呼ぶなら
キスしてさよならさ





Eagles『Hotel California』
Elektra / Wea


(このコラムは2014年4月3日に公開されたものです)

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