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デヴィッド・ボウイが描くヴァレンタインの世界

2019.02.14

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 2013年。デヴィッド・ボウイが発表した「ザ・ネクスト・デイ」に収録され、シングルカットされた曲が「ヴァレンタインズ・デイ」である。
 今日は、ヴァレンタイン。だが、この曲は、この日が想像させるロマンティックな内容の歌ではない。
 プロデューサーのトニー・ヴィスコンティは、この曲が1929年の2月14日に起きた事件にインスパイアされたものだと語っている。


テディとジュディは倒れた
ヴァレンタインは一切を見ている
彼には言うべきことがある
今日はヴァレンタイン・デイなのだ


 1929年、シカゴで起きたノースサイド・ギャングとサウスサイド・ギャングの抗争は、銃撃戦となり、血のヴァレンタインとも呼ばれることになる。
 サウスサイドのボスだったのが、有名なアル・カポネである。カポネの発案なのだろうか、ギャングたちは警官に扮し、パトカーを使い、ノースサイドの4人のギャングを射殺した。その際、3人の一般人が巻き添えになっている。


その痩せこけた手が
その氷の心が
今日、ことを起こしたのだ
ヴァレンタイン
ヴァレンタイン




 ヴィスコンティは、曲に関して、キンクスの「ウォータールー・サンセット」にインスパイアされているとニュー・ミュージック・エクスプレスに語っているが、それより顕著なのは、ニューヨーク・パンクのテレヴィジョンへのオマージュだろう。
 この曲に使われているギター・リフは、彼らの「シー・ノー・イーヴル」のものだ。ボウイは、アルバム「スケアリー・モンスターズ」の中でも、テレヴィジョンのフロントマン、トム・ヴァーラインのソロ・アルバムに収録されている「キングダム・カム」をカバーしている。





 ヴァレンタインという名前の主人公が引き起こす悲惨な事件。
 そこに絡んでくる「悪を見ない」という曲のリフ。
 ボウイの世界である。


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