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派手な衣装を纏うエルトン・ジョンにバーニー・トウピンが重ねた世界

2024.03.25

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ベニー、鋭い感覚を持った彼女
エレクトリック・ブーツにモヘアのスーツ
雑誌で読んだことがあるのさ
ブ・ブ・ブ・ベニーとジェッツ


 1973年。
 エルトン・ジョンは突然、キャラクターを変えたように、派手な衣装に身を包み、大きなサングラスをかけ、ステージ上でおどけてみせた。

 その姿は、「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」などでレコード会社が創り出そうとしていた「現代の吟遊詩人」というイメージを根底からぶち壊すようなものだった。

 本格的なアメリカ進出とともに発表されたアルバム「黄昏のレンガ路」からシングルカットされた「ベニーとジェッツ」は、新しいエルトンのイメージに決定的な影響を与えたといっていいだろう。

 母国イギリスでは、ダイアナ妃が大好きだったという「キャンドル・イン・ザ・ウインド」のB面に収録されていたこの曲は、アメリカではラジオのリクエスト人気もあり、A面のシングルとして発売され、大ヒットを記録する。

 この新しいファンキーなエルトンを支持したのは、まったく新しいファンたちだった。この曲がR&Bチャートでも1位となり、エルトン自身が人気テレビ番組「ソウル・トレイン」に出演したことでも、その幅広い人気ぶりがわかるだろう。


エルトンはこの曲を書くにあたり、イギリスで流行していたグラム・ロックをオマージュしたと言われている。デビッド・ボウイやTレックスが人気を博していた時代である。

 そんな背景もあるのだろう、作詞を担当したバーニー・トーピンは、この曲の歌詞を「オーウェル的な世界」だと説明している。近未来的、SFチックな世界。そこで演奏するアンドロイド的なロックバンド。バーニーがイメージしたのはそんな世界だった。

「そのイメージは、ヘルムート・ニュートンが表現したようなスタイル美です」と、バーニーは語っている。ヘルムート・ニュートンはドイツの写真家で、雑誌「ヴォーグ」などでエロティックな作品を発表している。

 1985年、バーニーはその世界観をそっくりそのまま映像化したとも思えるミュージック・クリップに出会い、衝撃を受ける。それはロバート・パーマーの「アディクテッド・トゥ・ラヴ」だった。


 だが、バーニーは、この曲の成功は、その世界観というよりは、エルトンが歌った「ブ・ブ・ブ・ベニー&ザ・ジェッツ」というキャッチーなメロディーだろう、と語っている。

「その部分については、悲しいことに、私は何の関与もしていないんだよ」



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