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ボノの心を動かしたキング牧師の誇り

2019.04.04

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早朝
4月4日
銃声がメンフィスの空に響き渡り
「フリー・アット・ラスト」
あなたの命を奪い去った
だが、あなたの誇り(プライド)を
奪い去ることはできなかった


 U2は、1984年に発表されたアルバム『焔』に収録されている「プライド」の中で、そう歌っている。
 この「プライド」には、サブ・タイトルがついている。(イン・ザ・ネイム・オブ・ラブ)だ。
 前回とりあげたシュープリームスの歌にも登場したキーワードだが、「愛の名のもとに」牧師として、黒人の公民権運動を指導したマーティン・ルーサー・キング・ジュニアこそが、この歌の主人公である。
 インドのマハートマ・ガンジーに影響を受けた牧師は、愛と非暴力でこの世界を変えることを夢見ていた。



 だが、1968年4月4日、キング牧師は、テネシー州メンフィスにあるロレイン・モーテルのバルコニーで、銃撃され、亡くなっている。

「フリー・アット・ラスト」


 それは、キング牧師の伝説的演説「私には夢がある」の最後に登場する言葉である。少し長いが引用してみたい。

自由の鐘を鳴り響かせようではないか。
これが実現する時、自由の鐘を鳴り響かせる時、
すべての村や集落
あらゆる州とあらゆる町から
自由の鐘を鳴り響かせる時
我々、神の子すべてが
黒人も白人も、ユダヤ教徒もユダヤ教徒以外も
プロテスタントもカトリックも
共に手を取り合い
懐かしい黒人霊歌を歌うことができる日の到来を
早めることができるだろう


そう語ると、牧師は演説の最後を黒人霊歌の歌詞で締めくくった。


フリー・アット・ラスト
フリー・アット・ラスト
ついに自由になった
全能の神に感謝する
我々はついに
自由になったのだ




 U2のボノは当初、この曲に、レーガン大統領を皮肉る歌詞を用意していた。つまらないプライドで軍拡をするな、というような内容になるはずであった。
 だが、1983年、シカゴの平和博物館を訪れたことで、その構想を一から練り直すことになる。
 ボノが博物館を訪れた時、ちょうどキング牧師展が開催されていたのである。



 ボノはキング牧師の展覧会の他に、長崎・広島の被爆者たちが描いた絵にも衝撃を受けている。これらの絵は「忘れがたき炎」(Unforgetable Fire)と題されていた。
「プライド」が収録されている『焔』の原題は『Unforgetable Fire』である。



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