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イフ・ユー・ゴー・アウェイ~吟遊詩人の輝き

2014.04.24

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ジョーン・バエズ、デヴィッド・ボウイ、ダスティ・スプリングフィールド、スコット・ウォーカー、フランク・シナトラ、ニルヴァーナ、ニール・ダイアモンドなど、あらゆるジャンルのシンガーがカバーしたシャンソン歌手がいる。

ジャック・ブレルだ。

ベルギーで生まれ、フランスに渡り、キャバレー歌手をしながら頭角を現し、詩人として、歌手として成功を収めたジャックを欧米に紹介したのは、ロッド・マッケン(マキューン)である。

1960年代後半、アメリカの大学生たちから圧倒的な人気を集めていた詩人であり、またシンガーソングライターであったロッドがジャック・ブレルの作品を英訳(といっても、ロッドなりの意訳である)し、その魅力を伝えたのだ。

変革の時代だった。
だが、いつでも人は変わることない、永遠の何かを求める。
そしてロッドが紹介したジャックの世界は、旧き吟遊詩人が描いたような、琥珀色の輝きに彩られていたのである。

日本では「行かないで」で知られているこの曲。
そう、私はあなたに命を預けた。。。と歌われる曲だ。
この曲をロッドがどう訳したのか、ご覧いただこう。

この夏の日に
あなたが行ってしまうなら
太陽も一緒に持ち去るがいい
夏の空を飛んでいた鳥たちとともに
ふたりの愛が新しく、気持ちは高ぶり
陽は浅く、夜は長く
月は夜鳴き鳥の歌に耳を傾け身じろぎもしなかったのに
あなたが行ってしまうなら
行ってしまうなら
もし行ってしまうなら

でももし、いてくれるというのなら
私はかつてなく、これからもないような
新たなる昼を紡ごう
太陽に向かって帆を掲げ、雨に乗り
木々に語りかけ、風を崇拝しよう
それから行くと言うのなら
私は理解しよう
この手に入る愛だけを残していってくれるなら
あなたが行ってしまうなら
行ってしまうなら
もし行ってしまうなら

あなたが行ってしまうなら
もしそのつもりなら
あなたが戻るその日まで
世界に回ることを止めろと伝えるがいい
あなたを愛することなく、何が愛なのか
あなたが身を翻し、行こうとするなら
私はこう言うだろう
今度ハローを聞くまで
この私は少しずつ死んでいくのだと
あなたが行ってしまうなら
行ってしまうなら
もし行ってしまうなら

でももし、いてくれるというのなら
かつてなく、これからもないような
新たなる夜を紡ごう
あなたの微笑みに向けて帆を掲げ、その感触に乗り
あなたの瞳に語りかけよう、こんなにも愛しているのだと
でも行くと言うのなら
泣くのはやめよう
あなたが行ってしまうなら
行ってしまうなら
もし行ってしまうなら

あなたが行ってしまうなら
その気持ちが揺るがないのなら
この世界に頼るべきものは何も残らない
ただ空いた場所だらけの空っぽの部屋
あなたの顔に浮かぶ空虚のよう
いっそ私はあなたの犬の影であればよかったのだ
あなたのそばにい続けたいと思うのであれば
あなたが行ってしまうなら
行ってしまうなら
もし行ってしまうなら


スコット・ウォーカー


マドンナ

エディット・ピアフ

ジャック・ブレル(オリジナル)

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