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エルトン・ジョンを縛りつけた婚約という名の呪縛

2019.06.06

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 1975年6月7日。エルトン・ジョンの『キャプテン・ファンタスティック&ザ・ブラウン・ダート・カウボーイ』は、アメリカのアルバム・チャートで初登場1位を記録した。収録曲「サムワン・セイヴド・マイ・ライフ・トゥナイト」もシングルカットされ、大ヒットとなった。

 この曲には「僕を救ったプリマドンナ」というサブタイトルがついていた。だが、エルトンを救ったのは、女性ではなく、ミュージック・シーンの先輩だった。

 1970年、デビューしたばかりのエルトンには、婚約者がいた。リンダ・ウッドロウという名の女性である。リンダは、エルトンとバーニー・トウピンと同じ家で暮らしていた。

「結婚が間近になって、僕は飲みに出かけた。ロング・ジョン・ボルドリーとバーニーとね」と、エルトンは語っている。

 ロング・ジョン・ボルドリーは、ロッド・スチュワートのコラムにも登場する英国ミュージック・シーンの兄貴分的存在である。

「すると、ジョンが言ったんだ。結婚すべきじゃないんじゃないか、って。僕には彼が言ってることが正しいことはわかっていたけど、どうしたらやめられるか、わからなかった。だから、飲んで酔っ払って、家に帰ると言ったんだ。結婚はやめた、って」


 曲のタイトルとなっている「僕の人生を救った」というのは、この時の出来事なのである。


君は僕を紐で縛りつけ
催眠術をかけたまま
教会の祭壇へ運ぶんだ


 リンダは、エルトンと別れた後、アメリカへ渡り、新しい生活を始めた。だが5年後、この歌を耳にした時は、少なからずショックを受けたという。エルトンには何の恨みもないが、この歌詞を書いたバーニーは許せない、というのだ。

「実際に起きたことを詩にしただけさ」とバーニーは語っている。「出来事と感情のパーツをカット&ペーストしただけだよ」

 この手の話は男性サイドから見るのと、女性サイドから見るのでは、まるで違った風景になるのだろう。

 その後、エルトンはまた違う女性と結婚し、予想通り離婚し、男性と再婚を果たしている。


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