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「マインドフルネス」が必要とされる時代に聴くB’sの「ultra soul」

2019.07.11

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 仏教ブームが続いている。

 僧侶を集めた爆笑問題の仏教バラエティ番組は終わってしまったが、今は「マインドフルネス」という名の黒船の来襲もあり、その裾根は広がるばかりだ。

「マインドフルネス」とは、ベトナム出身の禅僧ティク・ナット・ハンが広めた言葉である。ブッダが説いたとされる八正道のひとつ、「正見」の英語訳である。キング牧師にも影響を与え、アメリカの連邦議会で瞑想を指導した経験をもつ彼は、IT業界でも人気が高く、グーグル本社も2011年に彼を招聘しているし、iPhoneのヘルスのメニューの中には「マインドフルネス」という項目が入っている。

 そんな背景もあるのだろう。

 B’zの「ultra soul」が、仏教をテーマにしているのでないか、という声が聞かれ始めた。2001年に発表され、世界水泳のテーマソングともなった彼らの代表曲のひとつである。

 悲しみを知ること。それは現実を現実として見据える態度、つまり正見=マインドフルネスだ。

 そしてその悲しみから逃げることなく、ひとり泣くこと。それはブッダが説いた六波羅蜜のひとつ、忍辱波羅蜜に他ならない、というわけだ。

 忍辱とは、現実を甘受し、耐え忍ぶこと。

 そうすることで初めて、人の中に本来宿っている仏性が光り輝くというわけである。

「ウルトラソウル」は、直訳すれば、超魂ということになる。

 今ある悲しみを直視できない時、人はその原因を外に求める。つまり、他のせいにする。そんなことでは、いつまでたっても幸せになれないし、祝福はされない、というわけだ。

 次のフックでは、こんな歌詞が続く。

 果てしない痛みから逃げるのではなく、受け入れること。その時初めて、戦う力が湧いてくるのだという歌詞になっている。

 この曲を作詞した稲葉浩志は当初、「ultra soul」の他に、「super soul」、「iron soul」というタイトルも考えていたという。

 彼が何故、このような歌詞を書いたのかは語られていない。だが、この曲が仏教ブームの中で再評価されていることだけは、確かなのである。


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