TOKYO音楽酒場

【5軒目】中野・BACAFE──ディープな酒場ストリートに突如現れる秘密基地

2014.09.25

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく新連載「TOKYO音楽酒場」。今回訪れたのは、中野の飲み屋街に佇む一軒家バー。個性的な店主の愛すべきキャラクターに惹かれ、ご近所の音楽好きたちが夜な夜な集まってくる人気のお店です。

中野北口。サブカルの聖地として人気の中野ブロードウェイにつながる長いアーケードを右に折れてしばらく行くと、仲見世通り(ふれあいロード)に出る。多くの飲食店が密集し、昼夜問わず賑わうその通りの中程からさらに右奥へと進んでいくと、こじんまりとした居酒屋やバー、スナックが軒を連ねる路地とぶつかる。〈昭和新道商店街〉と呼ばれる、このディープな酒場ストリートと早稲田通りが交差する手前にある秘密基地のような店が、〈BACAFE(バカフェ)〉だ。

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2階建ての一軒家をそのまま酒場にしたようなBACAFEがオープンしたのは、2007年7月7日。何か意味があってこの日にしたのか? と訊いても「いや、本当は7月1日からはじめようとしたんだけど、用意が間に合わなくて(笑)」と、煙に巻くように応えるのが、この店のマスターであるBA(バ)さんだ。

「お店をやろうと思って探してた時に、この物件を見つけて。路面だし、角にある店が良かったから、すぐに気に入って」

1階はカウンターのみで、7、8人も座ればいっぱいになってしまうほどの広さ。だが、奥にある階段を上ると、隠れ家のような座敷が広がる。シャンデリアとミラーボールが異様な存在感を醸しているが、不思議と友達の部屋に遊びに来たような居心地の良さで、ゆったりくつろいでしまう。

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BAさんにはこの店のマスターの顔の他に、ミュージシャンとしての顔もある。彼が〈MONGHANG(モンハン)〉というバンドで活動していた当時、並行してこの店をオープンさせた。

「MONGHANGは、宗教団体みたいな格好でプログレをやるようなバンドで。その時、僕は日本語を話せないっていう設定だったんだけど、マグマ(フランスのプログレ・バンド)のコバイア語みたいな、めちゃくちゃな言葉で歌ってましたね」

現在もBAさんは、MONGHANGでも一緒だったベーシストのケイタイモが結成した〈WUJA BIN BIN〉でボーカルとして活動中。このバンドでも歌うのはちゃんとした言葉の歌詞じゃなく、スキャットだけなのだが。

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「僕がもともと好きなのは、ブラジル音楽とか……あとはマイク・パットンがすごく好きなんで、彼がやってるミスター・バングルとかフェイス・ノー・モアとかファントマスとか、アヴァンギャルドなハードコアみたいなのも好きでしたね。でもまあ、なんでも聴くからなぁ……わりかし広く浅くっていう感じで」

「広く浅く」と言うよりも、広いうえにひどく凸凹した海底のような音楽観とでも言おうか──彼が参加してきたMONGHANGやWUJA BIN BINのサウンドと同じように、さまざまなジャンルがカオティックに混ざり合う感覚は、BACAFEで流れる音楽にも通じる。

「店で流れてる音楽は、僕のiPodをシャッフルでかけっぱなしにしているもので……ただ自分の好きなのをかけてるだけなんだけど、本当にメチャクチャなんですよ。ハードコアが流れた後に松田聖子が流れたり……そういうの大好きなんですよね。音楽がメチャクチャな方がお店もカオスになって面白いし、その方が酔いが回るっていうか(笑)。カウンターから見てると、ちゃんと聴いてるかどうかは関係なく、意外とみんな流れている曲の雰囲気に流されちゃうもんなんですよね」

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店名にカフェとついているせいで、本当にカフェと勘違いして入ってきてしまうお客さんもいるそうで……。

「そうそう。本当にガチなカフェと勘違いして来る女の子2人組とかも、たまにいるんですよね。そういう時にハードコアが流れたりすると『ヤッた!』って思いますね(笑)」

ちなみにBACAFEには、コーヒーなどのカフェメニューもあるのだがスウィーツは置いていない。しかし、すぐ近くにケーキ屋があるので、スウィーツだけは持ち込みが可能だそう(本気で言ってるのかどうか、ちょっとわからないのだが)。この店をはじめる前には、高円寺のメキシコ料理屋や沖縄料理屋で働いていたというBAさん。その経験も活かされているのか、フードのメニューもなかなか充実している。タコス生地にチーズを挟んで焼いた〈ケッサディーヤ〉などは、酒を飲んでいて小腹が空いた時のつまみとして、実にちょうど良い。

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「本当はタコス食べてビール飲んで……みたいな感じで料理をメインにした飲み屋にしようと考えてたんですけど、ほとんどの人が2軒目、3軒目に寄っていくんで、思ったほど料理が出ない(笑)。やっぱり地元の人が多いから、だいたい平日でも1時頃が一番お客さんが多いですかね。本当の営業時間は3時までなんですけど、お客さんが楽しく飲んでたらそのまま開けちゃうし」

店がオープンした頃からの常連というYさんも、平日だというのに遅くまで飲んでしまうお客さんの一人だ。

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「BAさんって、話してることが常に面白くて。僕も店に来るとずっとゲラゲラ笑ってますね。それに、音楽バーを謳ってるわけじゃないのに、なぜかミュージシャンや音楽好きが集まる。普通のサラリーマン風の人でも、ものすごくマニアックな音楽好きの人もいるし。他にも映画監督や漫画家なんかも自然にやってきたり……それもBAさんの吸引力だと思うんですよね」(常連Yさん)

「そういえば一度、貴ノ花が来たこともあったね(笑)」

「この店、2階もあるんですけど、常連になるほど2階に行きたがらなくなる。みんなBAさんと話したいんですよ。店の周年パーティとか1階のフロアがぎゅうぎゅう詰めになって大変なことになるんですけど、そこで必ずビースティー・ボーイズの「Sabotage」が流れるとBAさんが階段からダイブするっていうイベントがあります」(常連Yさん)

心地良く酔いながら、BAさんや隣同士になったお客さんとバカ話で笑っていると、ついつい時間が経つのを忘れる──これってなんだか学生の頃に、仲間で部室に集まってはダラ話をして盛り上がってたような感覚に似てるよな──ふと気がつくと、カウンターは見事なまでに男だらけとなっていた。

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撮影/相澤心也






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BACAFE
東京都中野区中野5-50-9
03-3387-2726
OPEN:PM7:00~AM3:00
火休
http://bacafe.jp/

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