TOKYO音楽酒場

【7軒目】梅ヶ丘・BAR FABRICA──バンドマンが作った、音楽好きのたまり場

2014.10.25

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく連載「TOKYO音楽酒場」。今回訪れたのは、梅ヶ丘で12年以上にわたり営業を続けるバー。音楽スタジオのすぐ隣にあるこの店は、オーナーもスタッフもバンドマン。音楽好きが気軽に集う、遊び場のようなお店です。

下北沢の2つ隣。高架化ですっかり駅舎の雰囲気も変わってしまった、小田急・梅ヶ丘駅。しかし、南口に出ると放射状に路地が走り、こじんまりとした商店が軒を連ねる風景は昔とさほど変わらない。駅から1分も歩かない雑居ビルの2階にはガードアイランドスタジオ、3・4階にはリンキィディンクスタジオがある。世田谷を拠点とするインディーズ・バンドのリハーサルスタジオとして、長く愛され続けるスタジオだ。

そのスタジオと同じビル内にあるのが、今回訪れる〈BAR FABRICA(バー・ファブリカ)〉。オーナー/ディレクターは、人気バンドFRONTIER BACKYARDのギタリストとして活躍する、増渕謙司。90年代のスカ/ミクスチャー・シーンを牽引したスキャフル・キングのメンバーでもある彼が、バンドでも頻繁に訪れていたスタジオのすぐそばに、バンドマンの溜まり場のような場所を作りたいと思い立ち、2002年にオープンした。

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オーナーがバンドマンなら、スタッフもバンドマン。現在2代目店長として店を取り仕切っているのは、元RIDDIM SAUNTERのギタリストで、現在は古川太一とともに〈KONCOS〉として活動する佐藤寛。

「お店は7月に12周年を迎えました。僕は立ち上げの時にはいなかったんですが、1周年の時にはすでに働いてましたね。当時まだ学生で、帯広から東京に出てきた直後。で、RIDDIM SAUNTERとしてSCAFULL KINGと出会って間もなく、ある日ケンジさんから電話があったんです。呼ばれて店に行ったら、ケンジさんはじめ、お店に出資している先輩ミュージシャンの方々が集まってオーナー会議みたいなのをやってて。そこで『ヒロシ、週に1回ぐらいバーでバイトできたら嬉しくない?』って訊かれて。『まぁ、そうですね』って応えたら、『じゃあ、お前の普段の生活を円グラフで描け』って言われて(笑)。大学生だったからほとんど暇してたのでその通りに描いて。そうしたら『じゃあ、バイト入る時間あるよね』って、そのまま働くことが決まっちゃったんです」(佐藤、以下同)

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それからバンド活動と並行して、FABRICAでバーテンダーとして働きはじめ、4年ほど経ったのち2代目の店長を任されるようになったそう。この日、オススメのカクテルを頼んでみたら、カルーアミルクをシェイクしたものを出してくれた。一見普通に思えるが、シェイクすることで細やかに泡立ちクリーミーさが一層増して、よくあるカルーアミルクとはまったく別物に生まれ変わっていた。

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ちなみに、ヒロシ店長がカウンターに入る日は基本的にフードメニューにパスタを出していないそうだが、事前予約すれば特製のパスタも食べられるそうだ(なお、他のスタッフが入る日には、日替わりでフードを提供しているそう)。

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カウンターの隅には、チャーベこと松田岳二(CUBISMO GRAFICO)がセレクトしたミニ図書館〈cubi books〉が常設されていて、壁面には多くのアーティストのライブ撮影などで知られる写真家・橋本塁の作品を展示。音楽がつなぐ様々なカルチャーが、店のあちこちに自然と溶け込んでいる。店にはミュージシャンたちも多く訪れるが、それ以上に地元の住人たちも帰り道に気軽に立ち寄っているようだ。

「12時過ぎてからの時間帯のほうが、お客さんが多いですね。チャージもないんで、普通にちょっと寄ってビール一杯飲んで帰るとか、そういう使い方も出来ますし。梅ヶ丘って、街の規模に比べるとバーが多くて。うちの店も含めて10軒ぐらいあるんですよ。しかも、どこも潰れていないっていうね」

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店内にはDJブースも設置され、不定期でイベントなども開催される。そんなFABRICAで流れる音楽は、実に多種多様。

「BGMって重要だなって思うんです。かかってる音楽によって雰囲気は変わるし、もちろんお客さんに合わせたりもしますしね。たとえばうちのスタッフのハタノさんはパンクが好きなんで、パンクを結構かけたりするし、僕は僕でたまにジャズかけたりするし。よく通ってくれるお客さんが『なんか今日雰囲気違わない?』って言ってくることもありますね。実際に変わってるのは音楽だけなんですけど、それだけでお店の印象ってガラッと変わるのが面白いなって思うし、楽しみのひとつですよね」

すっかりバーテンダーとしての立居振舞いが板についているヒロシ店長だが、彼が現在活動しているKONCOSは、全国津々浦々をツアーで回っているトラヴェリン・バンド。取材当日も、全国100ヶ所を巡るツアーの合間を縫って店に立っていた。昼夜逆転の生活で2足のわらじを履くのは、なかなかに大変そうだが。

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「RIDDIM SAUNTERをやってる時に店長になったんですけど、今やってるKONCOSのほうがめちゃくちゃライブ多いんですよ。でも、だいぶ慣れちゃいましたね。僕、いつでもどこでも寝れますし。バンドで海外行った時も、僕だけ全然時差ボケとかないんですよ(笑)」

ハードなスケジュールを縫ってまでも、長く店長を続けられる理由は、やはりカウンターに立つことで見えてくる何かがあるからなのだろう。

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「たしかに、お店でお客さんと話したことや、教えてもらった音楽が、自分の音楽表現や作品を作る時の刺激になってると思います。ここに立ってると、まわりの音楽関係者が聴かないようなものだったり、僕自身もあまり触れてこなかった音楽を知る機会も多いし。それをみんなで聴いて、『じゃあ、こういうのも気に入ると思うよ』みたいな感じで、お客さん同士が勝手に情報交換しはじめたりね」

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「僕にとっては、たまたまカウンターで一緒になったお客さん同士が、話が合って盛り上がってる感じがすごく好きで。そういう引き合わせが出来た時が、なんか嬉しいんですよね。たとえばカウンターに常連さんがいて、この人はこういう音楽が好きだっていうのは知ってて、また別の席に座ってるお客さんもそれに近いような音楽が好きで。そこに僕がカウンターの中から何かしらのパスを出すことで、お客さん同士の話が噛み合って、そこからまた盛り上がる……みたいな流れが作れると嬉しいですよね。僕は別にその会話にずっと加わるわけでもなく、グラスをキュッキュと磨きながらなんとなく聞いてるのが一番気持ちいい(笑)。やっぱりこのお店を好きで通ってくれてる人たちには、どこかで共通する感覚みたいなのがあると思いますからね」

撮影/相澤心也

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BAR FABRICA
東京都世田谷区梅丘1-21-7 梅丘駅前ビル2F
TEL 03-3427-9566
OPEN 19:00~5:00 無休
*2015年6月19日をもって閉店しました。
http://www.bar-fabrica.biz



FRONTIER BACKYARD “10 surroundings”
12月14日(日)東京・新木場 STUDIO COAST
w/ASPARAGUS、avengers in sci-fi、BACK DROP BOMB、the band apart、BRAHMAN、the chef cooks me、COMEBACK MY DAUGHTERS、LOW IQ & ANOTHER BEAT BREAKER、RAZORS EDGE、YOUR SONG IS GOOD、8otto
*11月6日から結成10周年記念の全国ツアーを開催。12月14日には新木場スタジオコーストにて大規模なイベントを行う。詳細は FRONTIER BACKYAD 公式サイトまで。


旅するコンコス ~まちといろ 100のいろ ファイナル~
1月31日(土)東京・新代田 FEVER
出演:KONCOS、ayU tokiO、吉田ヨウヘイgroup
DJ:MIXX BEAUTY、Vienda!
*現在全国101ヶ所を巡るツアーを開催中のKONCOS。1月末には東京にてツアーファイナルを行う。詳細は KONCOS 公式サイトまで。

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