TOKYO音楽酒場

【17軒目】代々木八幡・NEWPORT──街のカルチャーを発信する自然派カフェ&バー

2015.04.10

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく連載「TOKYO音楽酒場」。今回は、心地良い音と美味しいオーガニックワインでくつろぎの時間を過ごせる、代々木八幡のカフェ&バーを紹介します。

渋谷区富ヶ谷1丁目。小田急線・代々木八幡駅と千代田線・代々木公園駅が隣接するこの一帯は、渋谷と下北沢に挟まれていながら、どこかのんびりとした生活感が漂う住宅街だ。ここ数年で富ヶ谷〜神山町周辺には飲食店が数多く開店。若者たちの喧噪から逃れ、落ち着いた雰囲気で語らえる大人のための店が集まる街として人気も高まっている。このエリアが注目されはじめる少し前、2008年の4月にオープンしたのが、今回訪れる〈NEWPORT〉だ。

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ランチタイムから深夜0時まで開店する、NEWPORT。午後のやわらかな日差しから、買物客が行き交う夕暮れ時、そして仕事帰りの人たちが通り行く夜ふけと、大きな窓から覗く景色が時間が経つごとに変化するように、近くに職場に勤める人たちから、ご近所に住む子ども連れのママから年配の方まで、店を訪れる客層も時間帯によって幅広く変わっていくそうだ。

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壁に飾られた額縁の中には、デヴィッド・バーン(トーキング・ヘッズ)のサインも。個展の開催で来日した際、この店に食事をしにきたのだそう。

カフェとしての使い勝手ももちろんだが、この店は酒とつまみも充実。中でも常時10種類は用意されているオーガニックワインが、グラスでいただけるのもうれしいところ。ワインとよくあう料理の数々は、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)、ブランダッド(干鱈のポテトグラタン)、クスクスのサラダなど、さまざまな地域の味覚を取り入れたや野菜中心の定番メニューが並ぶ。

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「店をはじめようと考えてた頃、ちょうどハマりはじめてたのが、オーガニックワインだったんです。今は自然派ワインとも呼ばれて流行ってるけど、当時はまだ、さほど一般的にも浸透してなかったですね。カフェなんだけどグラスで何種類も選べるのがいいのかと。それはオープン当初から変わらず続いてるスタイルですね」

そう語るのは、オーナーの鶴谷聡平さん。大手レコード会社勤務を経て、1999年には表参道のSPIRAL RECORDSを立ち上げ、ショップ・バイヤーとレーベル・ディレクターを務めた。

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「SPIRAL RECORDSでは、CDショップとレーベル業務を行っていたんですが、何年か経つうちに、昔でいうジャズ喫茶みたいな場所を2000年代に置き換えたような店を作りたいと思いはじめたんです。音楽が流れていて、お酒も飲めて、人が集うサロンのような場所……それも繁華街の夜中に営業するような店じゃなく、生活と密着しているエリアで昼間から来れるようなお店が欲しいなと思って。その当時の音楽シーンも、MP3やらiTunesやらYouTubeに代表されるような便利さに取って代わられたイメージがあったんですね。最近のアナログ復権の兆しともつながると思うけど、やっぱりそういう古くからのスタイルは、どこかで絶対に残したほうがいいですからね」

そんなプランをぼんやりと考えはじめた頃、鶴谷さんが通勤途中によく通っていたカフェが閉店するという話を耳にした。

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「僕の友人でPepe Californiaというバンドでも活動している斎藤寿大という人がいて、彼は本業がwebディレクターなんです。その彼が所属していたデザイン事務所が、もともとこの場所でカフェをやってたんですね。だけど、身体を壊した人がいてお店を閉めるってことになった。前述したように自分も店をやりたいってことを以前から話してたこともあって、彼らから店舗を引き継がないかと言ってくれて。まだ前職に就いてた時だったのでいきなりの無茶振りだったんですけど、こんな機会ないよなって考えて、店舗を引き継ぐことにしたんです」

飲食はまったくと言っていいほど未経験だったという鶴谷さんは、最初から一人ではじめるのではなく、斉藤さんと共同で店を経営している。ちなみに斉藤さんが参加するPepe Californiaも、かつてSPIRAL RECORDSのレーベルからCDをリリースしていた。NEWPORTをベースにした「音・酒・人」のつながりは、そこからさらに広がっていく。

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「オープン当初から音楽関係の知り合いもよく来てくれたり……このあたりは、音楽やデザイン、編集、アパレル関係の人も多く住んでるんですよね。そういう富ヶ谷という町の立地と、僕らのつながってる人脈、そして自分たちがやりたいことが、わりと最初からマッチしてたのかなって思います。それにこのあたりって、渋谷でもない下北でもない、独特の空気が流れてる。今でこそ代々木上原とか代々木八幡とか、あとは奥渋谷と呼ばれる神山町のあたりは人気エリアになりつつあるんですけど、オープン当初は店の数も全然少なかったですからね」

店内にはDJブースも常設。土曜日にはDJが入り、ゆったりとくつろげる選曲を聴かせる。

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「月2回はレギュラーのDJにラウンジ的な選曲をしてもらってて、他の週はいろんな人に来てもらってます。たとえば、ノアルイズ・マーロン・タイツのメンバーが、SP盤だけをかけるイベントを行ったり。彼らが78回転をかけられるプレーヤーを持ち込んで開催したんですが、SP盤はやっぱり音がむちゃくちゃいいんですよね。あと、3年ぐらい前から続いてるのは、1組のアーティストしばりで一晩かけまくるっていうイベント。1回目にやったのはニーナ・シモンNIGHT。それが好評だったので、エルヴィス・コステロNIGHT、エブリシング・バット・ザ・ガールNIGHT、ジョニ・ミッチェルNIGHT……といろんなアーティストしばりでやりましたね。シリーズ化して一番盛り上がったのは山下達郎NIGHT。普通はよっぽどのファンじゃないと、1組にアーティストをなかなか掘り下げられないし、そのアーティストの曲だけをまとめて聴ける機会も少ないじゃないですか? 1組を掘り下げて選曲するたびに自分の中でも再発見があるし、やっぱりいいなって惚れ直して毎回が終わるっていうね(笑)」

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限られた品数ではあるが、鶴谷さんがセレクトしたCDや書籍、ZINEなども販売。また店内の壁面は、ギャラリースペースとして開放しているそうだ。

「代々木八幡からカルチャーを発信する店にちょっとずつなれればと思って、去年ぐらいからNEWPORTでフリーペーパーを作りはじめたんです。うちの店で絵や写真の作品を展示して、その展示している作品を表紙にしたフリーペーパーを発行する……そうすることで店に、音楽や食・酒とは違う要素が入ってくる。それに一人のアーティストが店にコミットしてくれることで、今まで来たことがないお客さんが何人かは絶対に来てくれる。そうすると、日々の店の中の空気も変わってくるんですね。そういうことを続けていって、NEWPORT自体がもっといい店になればという気持ちもあるし、それ以上に普段自分が生活している街がもっと楽しくなったらうれしいなと思うんです」

思えば、鶴谷さんが以前働いていたSPIRAL RECORDSで取り扱っていたのも、日々の生活の中でいかに響くか、という視点からセレクトされた音楽だった。こうして美味しい酒と美味しい食事を提供する店をはじめた今も、音楽に対する視点は変わらない。

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「たしかに、言われてみるとそうですね。やってることが昔も今も、勝手につながってるのかもしれない。音楽は自分の中で一番大きい存在ですけど、100パーセント音楽に特化したお店じゃないほうがいいなと思うところはあって。何かにどっぷり浸かるんじゃなく、どうしてもいろいろな要素をミクスチャーしてしまう……まあ、本当は一つの対象にこだわって、イキきってる人のほうがカッコイイと思うんだけど(笑)。でも、それだったら店を開くのも、ここ代々木八幡じゃないんですよね」


撮影/相澤心也




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Music Cafe and Bar
NEWPORT

東京都渋谷区富ヶ谷1-6-8 モリービル1F
TEL:03-5738-5564
月〜金 11:30〜24:00
土 12:00〜24:00
日休
nwpt.jp

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