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エリザベスタウン〜人生の大失敗と父の死、そして音楽と家族と愛に捧ぐ

2015.02.11

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人生に失敗はつきものだし、その経験が成長の糧となっていくことは言うまでもないが、もしスケールの違う大失敗をやらかしてしまった時、人はどうなるのだろう? 大失敗には質の悪い弊害も伴う。愛の喪失、お金の心配、健康の不調、精神の崩壊、そして世間からの孤立。

失敗とは成功しないこと
失敗は誰にでもある
だが“大失敗”は神話的なスケールの災厄を意味する
それは人々の噂の種となり
聞く人に生きる歓びを与える
“自分じゃなくて良かった”と


映画『エリザベスタウン』(ELIZABETHTOWN/2005)は、そんな大失敗した者を主人公にした一本。様々な出来事と直面しながらも、人は決して独りではない。大失敗しても次があることを教えてくれる、力強くも優しい物語だ。こんな作品と巡りあった人は幸運だと思う。

監督・脚本は『幸せへのキセキ』『あの頃ペニー・レインと』『ザ・エージェント』などで知られるキャメロン・クロウ。脚本作りに数年も費やすことで有名で、ストーリーや台詞の組み立て方に評価が高い映画作家。元音楽ジャーナリストだけあって曲の使い方も秀逸で、本作にも抜群のロックサウンドがここぞというタイミングで鳴り響く。当時、奥様だったナンシー・ウィルソン(ハート)のアコースティック・スコアも心地いい。

物語はオレゴン州の大企業で新しいスニーカーの開発とデザインのプロジェクトリーダーを担当するドリュー(オーランド・ブルーム)が、会社に大損失を与えるところから始まる。その額は前代未聞の約10億ドル。社長からも恋人からも“最後の目線”を送られ、解雇されたドリューは自殺を決意。しかしそんな時に限って父の死の知らせが届く。

父ミッチの故郷であるケンタッキー州エリザベスタウンへ飛び立つドリュー。自殺は葬儀が終わってからでいい。父の口癖は「人生山あり谷あり」だったことを想いながら飛行機に乗っていると、客室乗務員のクレア(キルスティン・ダンスト)と出逢う。クレアはエリザベスタウンまでの道案内をしてあげた。

故郷ではドリューはスーパーデザイナーとしてヒーロー扱い。そして父がどれだけ多くの人々に愛され、偉大な存在だったのかを知る。個性の強い親戚連中たち、母ホリー(スーザン・サランドン)や妹と交流しながら、ドリューは長年の仕事一筋の生活で自分に欠けていたものに気づき始める。「パパは離れ離れになっていた皆の心を一つにした」のだ。

クレアとも親しくなった。自分の大失敗を告白するドリューに、クレアは「それだけ?」と微笑む。葬儀も終わり、現実に戻ってオレゴンに帰ろうとするドリュー。車での40時間以上の旅だ。クレアは“特別な地図”をドリューにプレゼントする。それは音楽付きの手書きマップで、ドリューは父の遺灰を助手席に乗せてアクセルを踏んだ。その帰路で待っていたこととは?

トム・ペティやライアン・アダムスの曲も痺れるが、映画で特に印象的な曲は三つ。亡き父との再会と帰路のドライブのシーンで流れるエルトン・ジョンの「My Father’s Gun」。従弟のバンドがお別れ会で演奏するレイナード・スキナードの「Freebird」。そして母ホリーがダンスを披露する「Moon River」。他の曲では駄目なのだ。

無難なものだけを求める者に本当の大失敗は起こらない
イギリスの空軍特殊部隊のモットーは“リスクを冒すもの者が勝利する”
蔦は硬いコンクリートを割って芽を伸ばす
鮭は血まみれになって流れに逆らい何百マイルも川を上る
その原動力はもちろんセックス
だがそれは命でもある


「フリーバード」の演奏シーン


映画の予告編

♪ My Father’s Gun


『エリザベスタウン』

『エリザベスタウン』


*日本公開時チラシ
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評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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