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白いドレスの女〜一度観たら忘れられなくなるフィルム・ノワールの傑作

2016.08.28

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1940〜50年代には低予算で退廃的な犯罪映画が作られていたが、それらは「フィルム・ノワール」と呼ばれるようになり、映画ファンから根強い支持が集まるようになった。主人公の破滅やそれを誘う魔性の女(ファム・ファタール)といったプロットやキャラクター、あるいは独特のセリフの言い回しや暗めの映像美など、このムードに取り憑かれる人は少なくない。

「暑さ以外の話ならお相手するよ」
「夫がいるわ」
「それで?」
「相手は要らないの」
「幸せならね」
「あなたには関係ないわ」


そんな見知らぬ同士の男と女の会話で始まる『白いドレスの女』(BODY HEAT/1981)は、まさに「フィルム・ノワール」の傑作として記憶されるべき名作になった。この作品には色気が全編に漂う。暑さ、気怠さ、堕落、感情の爆発、官能的な関係に至るまで、すべてに上質な色気のようなものが漂っている。

これが初監督作となったローレンス・カスダンは、古いフィルム・ノワールの傑作中の傑作『過去を逃れて』や『深夜の告白』などの世界観を自身の作品に取り入れた。もともとは脚本家としてジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』シリーズを担当していただけに、脚本作りには絶対的な自信があったのかもしれない(ちなみに大ヒットした『ボディガード』もカスダンが70年代に書いた脚本作品)。

主演はウィリアム・ハートとキャスリーン・ターナー。ウィリアムは舞台役者として才能が知れ渡っていたが、本作は3本目の映画出演でまだ無名に近い存在。キャスリーンも同じく舞台の経験はあるものの、映画出演は何とこれが初めて。カスダンはあえてこの二人を起用したが、その理由は「より現実味が帯びる」こと、そしてキャスリーンの声がローレン・バコールに似ていて「脚が綺麗だったから」だそうだ。

撮影は暑さを重視するために当初のニュージャージーからフロリダの海辺の町に変更。しかし、撮影中は異常気象の影響もあり、まさかの寒波に覆われ、俳優たちが喋る度に白い息が出る始末(キャスリーンは撮影シーンの直前まで口に氷を含んでいたという。そうすれば白い息が出ないからだ)。ウィリアムが着るシャツには、毎回スプレーの水を脇や背中に吹きかけなければならなかった。また、映画には後に大スターとなる無名時代のミッキー・ロークも登場している。

物語は、弁護士のネッド(ウィリアム・ハート)が暑い夜に立ち寄ったジャズの野外コンサートで、白い服を着た美女のマティ(キャスリーン・ターナー)と出逢うところから始まる。ビッグバンドが演奏しているのは甘い調べの「That Old Feeling」。マティが豪邸に住んでいるのは怪しい商売をしている夫のおかげだが、夫はほとんど不在で彼女はそこに愛はない。

マティの美しさに魅せられたネッドは、ある夜、彼女と関係を結ぶ。それから毎晩のように肉欲に溺れていく二人。そして莫大な財産の存在、夫殺しの計画が進められていく。しかし、友人の刑事や検事の捜査は次第にネッドに向けられていき……クライマックスですべてが「あらかじめ仕組まれていた」ことを知るネッド。刑務所内でマティの高校時代の卒業アルバムを開く時、ネッドはそれを確信する。

色気のある音楽は『007』シリーズを手掛けたジョン・バリーによるもの。サックスの音色が印象的なテーマ曲は、今やシネ・ジャズのスタンダードになっている。幻と言われていたサウンドトラックも近年になって無事リリースされた。

すべてはここから始まる。暑い夏の夜、ビッグバンドジャズの甘い調べ、そして白いドレスの女。


有名な官能的なシーン。

『白いドレスの女』

『白いドレスの女』


*日本公開時チラシ
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*このコラムは2015年12月2日に初回公開されました。

*参考/『白いドレスの女』DVD特典映像

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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