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ザナドゥ〜ELOの音楽と伝説のスターが救ったオリビア・ニュートン=ジョン主演作

2023.08.07

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『ザナドゥ』(Xanadu/1980)


70年代半ばから80年代前半にかけて、オリビア・ニュートン=ジョンの人気は凄まじかった。ヒットチャートを見てもそれは一目瞭然。4曲のNo.1ヒットと11曲のトップ10ヒットを放っている。可憐なルックスと透明感のある声もあって、日本でも当時ファンだった人は多い。

「Let Me Be There」(1973年/全米6位)
「If You Love Me (Let Me Know)」(1974年/全米5位)
「I Honestly Love You」(1974年/全米1位)
「Have You Never Been Mellow」(1975年/全米1位)
「Please Mr. Please」(1975年/全米3位)
「You’re the One That I Want」(1978年/全米1位)*映画『グリース』
「Summer Nights」(1978年/全米5位)*映画『グリース』
「Hopelessly Devoted to You」(1978年/全米3位)*映画『グリース』
「A Little More Love」(1978年/全米3位)
「Magic」(1980年/全米3位)*映画『ザナドゥ』
「Xanadu」(1980年/全米8位)*映画『ザナドゥ』
「Physical」(1981年/全米1位)
「Make a Move on Me」(1982年/全米5位)
「Heart Attack」(1982年/全米3位)
「Twist of Fate」(1983年/全米5位)*映画『セカンド・チャンス』



映画『ザナドゥ』(Xanadu/1980)は、そんなオリビアが人気絶頂の頃に主演したミュージカル・ファンタジー。ギリシャ神話のミューズ(音楽と踊りの女神)として、様々なコスプレと脚線美でセクシーなダンスやタップを踊ったり、ローラースケートを履いてたまらない笑顔で微笑んでくれたりする。

早い話、映画としての作品性やクオリティは低い。でもオリビアのファンならそんなことはどうでも良かった。彼女の美しさはそれくらいの威力があった。

ではこの映画を今観るならその程度の気持ちで見るべきか?

いや、少し視点を変えると感慨深いものがある。ミュージカル映画の全盛期を支えた伝説のスター、ジーン・ケリーがタップを踏んだ最後の作品でもあるからだ。

ジーンは初老の実業家役で登場するが、実はスイング・ジャズやビッグバンドが奏でる遠い昔の想い出の中に生きながら、いまだに音楽への情熱を断ち切れないでいるという切ない設定。

撮影前の契約時、68歳のジーンは「絶対に踊らない」と言っていたそうだが、出演者たちのリハーサルが始まると、足が自然に動き出したという。タップダンスは自転車に乗るのと同じで、一度見につけたら決して忘れない技術なので、100歳になっても踊ることができるそうだ。

映画ではオリビアとのダンスシーンで華麗なステップを披露。思わず見入ってしまう。これぞエンターテインメントの真髄。その辺のスターとは重みが違う。ジーンの存在なくしてこの映画は成立しない。

そしてELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)の音楽。

ジェフ・リンの楽曲は何度でも聴きたくなる魔法のようなものがある。ELOもオリビア同様、70年代半ばから80年代前半にかけて数多くのヒット曲を放ち続けた。映画はヒットしなかったが、サントラ盤は売れた。中でもアニメーションのシーンで流れるバラード「Don’t Walk Away」は名曲。

主題歌である「Xanadu」はELOサウンドとオリビアの声がピッタリとはまり、両者の代表曲の一つになった。ちなみにLP時代はB面がELOナンバー、A面はオリビアのブレーンとも言えるジョン・ファーラーの曲が並んでいた。

ストーリーは、ハリウッドのレコード会社の雇われ画家、ソニー(マイケル・ベック)が志半ばで破いた絵が空に撒かれるところから始まる。その切れっ端が壁画に描かれた9人の女神のもとに舞い降りると、その中の一人キーラ(オリビア・ニュートン=ジョン)が現実に現れる。ソニーは彼女に心奪われていく。

海岸でクラリネットを吹きながら孤独を味わうダニー(ジーン・ケリー)は、グレン・ミラー楽団にいた頃の音楽の夢が忘れられず、みんながハッピーになれる音楽の殿堂を作ることを夢見ている。ダニーはソニーと出逢ったことから、「ザナドゥ」という名のナイトクラブのオープンへ向けて動きだす(チューブスも登場)。そこにはもちろんキーラもいるが、彼女は元の世界に戻らなければならなかった……。

映画『ザナドゥ』は2007年にはブロードウェイ・ミュージカルに進出。オリビア・ニュートン=ジョンは何度も来日(最近は2015年)しながら音楽活動を続けている。現在68歳。あの時のジーン・ケリーと同じ年齢になった。


オリビア・ニュートン=ジョンとELOによる主題歌

ELOの名曲「Don’t Walk Away」が流れるシーン

『ザナドゥ』

『ザナドゥ』






*日本公開時チラシ

*参考/『ザナドゥ』パンフレット
*このコラムは2017年7月に公開されたものを更新しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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