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ゲッタウェイ〜前代未聞のアドリブで伝説になったスティーヴ・マックィーンの代表作

2018.06.13

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1968年の主演作『ブリット』で、体制側である刑事役を演じたにも関わらず、“瞬間の演技”ともいうべき孤独感を貫き、やはり権力とは無縁のアウトローであり続けたスティーヴ・マックィーン。映画俳優として本当の自信を得て、長年思い描いてきた“マックィーン像”を遂に完成させた。

その後、ウィリアム・フォークナー原作の『華麗なる週末』(1969)、自らのカーレースへの情熱が全編に渡って流れた『栄光のル・マン』(1970)、サム・ペキンパー監督の『ジュニア・ボナー』(1971)と、同時期の世界的ロックバンドのように年に1作のペースで順調にキャリアを重ねたマックィーンだったが、私生活では深い溝と直面していた。売れない頃から一緒だったニール・アダムスとの15年の結婚生活を終えたのだ。

心機一転した43歳のマックィーンは、シドニー・ポワチエやバーブラ・ストライサンドやポール・ニューマンらと新たにFAP(ファースト・アーティスツ・プロダクション)を設立。その第1回作品となったのが代表作の一つ『ゲッタウェイ』(The Getaway/1972)だ。

『ワイルド・バンチ』『わらの犬』など、バイオレンスの巨匠として知られるサム・ペキンパー監督と二度目のタッグを組み、映画は大ヒット。脚本はウォルター・ヒル、音楽はクインシー・ジョーンズが担当した。

また、共演には『ある愛の詩』でスターとなった知性派女優アリ・マッグロー。34歳の彼女は映画会社の重役と結婚していたが、正反対のタイプであるマックィーンと恋に落ちてしまう。二人は撮影中に婚約を発表して話題になった。

撮影期間は1972年2月23日から5月10日の二ヶ月半。冒頭の刑務所シーンからラストの国境を越えるシーンまで、ストーリー展開に沿ってオールロケで進められた。映画は権力者の罠から逃れるアウトロー夫妻の逃避行もの。タイトルの“Getaway”には高跳び、事を上手く運ぶなどの意味がある。マックィーンの魅力が活かされた傑作として人気が高い。

実は撮影中、ペキンパーとマックィーンは脚本にはない“アドリブ”を仕掛けた。キャロル(アリ・マッグロー)の身勝手な危機一髪の行動に、ドク(スティーヴ・マックィーン)が冷静に怒り出すシーン。何とマックィーンはマッグローを何度も殴ったのだ。何も知らない彼女はびっくりしたに違いないが、カメラの前でそのまま演技を続けたという。

それにしてもヒーローが女性に手をあげるのは前代未聞。いかにもペキンパーらしい演出だった。余談だが、1994年にはアレック・ボールドウィン/キム・ベイシンガー主演でリメイク版が製作された。

マックィーンは翌73年に『パピヨン』でダスティン・ホフマンと共演。同年にはローリング・ストーンズの「Star Star」の歌詞にも登場。74年には世界で最もギャラが高い映画スターとなり、『タワーリング・インフェルノ』でポール・ニューマンとダブル主演。これを機に引退を考えたマックィーンは4年間も映画から遠ざかった後、マッグローとも離婚。

映画を一本撮る契約が残っていたマックィーンは78年に『民衆の敵』で第一線に復帰。しかしミスキャストが誰の目にも明らかで、興行成績は惨敗。80年にバーブラ・ミンティと3度目の結婚をし、同年に西部劇の集大成とも言える『トム・ホーン』を撮影。この時、すでに肺の病気と闘っていたマックィーンは残り少ない人生を覚悟していた。そして最後の作品『ハンター』へ……1980年11月7日死去、享年50。

痛みに疲れたけど、まだ生きていたい。
アイダホに飛行や車を持って移りたい。
妻やペットも一緒で、人生の再出発さ。
人の人生に影響を与えることをしたいな。
神の愛を伝え、自分の経験を語るんだ。


アカデミー賞受賞とは無縁だったが、あれから40年近く経っても映画俳優としてのマックィーンを愛する人々は今も多い。『ティファニーで朝食を』『明日に向って撃て!』『地獄の黙示録』『ダーティハリー』『フレンチ・コネクション』『未知との遭遇』に出演していたかもしれないマックィーン。実現していればどんな映画になっていたのだろう。

(前回のコラムはこちら)
ブリット〜映画俳優として真の自信を得た“スティーヴ・マックィーン”の完成作

予告編


『ゲッタウェイ』

『ゲッタウェイ』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『ゲッタウェイ』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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