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ピンク・パンサー〜クルーゾー警部とアニメとテーマ曲を生んだ破壊的コメディ

2023.07.23

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『ピンク・パンサー2』(The Return of the Pink Panther/1975)


1970〜80年代半ばに子供時代を送り、毎日のようにテレビと向き合っていた世代にとって、今も強く記憶に刻まれた番組がある。

中でも映画のロードショー番組は名解説者による名トークもあり、毎週楽しみにしていた人も少なくないはず。夜9時からの約2時間はいつものリビングルームが束の間のシアターになっていた。家庭用ホームビデオやレンタルビデオ店がまだ普及する以前の話だ。

テレビなのでCMが入ってしまう。映画も放送時間内に収まるように編集・カットされている。しかも日本語吹き替え。それでも子供には関係ない。『月曜ロードショー』(荻昌弘)、『水曜ロードショー』(水野晴郎)、『金曜ゴールデン洋画劇場』(高島忠夫)、『日曜洋画劇場』(淀川長治)は、本当にたくさんの夢を与えてくれた。

いつでもどこでも好きなタイトルを視聴できる今と違い、決まった時間にいつもの場所で選べないタイトルを観る。そんな縛りのきつい状況だからこそ、強烈な印象を植え付けてくれたのだ。

特に刑事・探偵・スパイものは登場人物のキャラクター性の高さもありシリーズ化されやすく、馴染みの存在となった。例えば、007のジェームス・ボンド、刑事コロンボ、ダーティハリー、エルキュール・ポワロ、そして今回のクルーゾー警部。

『ピンク・パンサー』(The Pink Panther)は、“迷”探偵クルーゾー警部とアニメーションとテーマ曲という3つのパワーコンテンツを生み出したヒットシリーズ。破壊的コメディとしてもカルトなファンに支持された。

監督はブレイク・エドワーズ、音楽はヘンリー・マンシーニ。『ティファニーで朝食を』『酒とバラの日々』の名コンビ。そして主演はイギリス人俳優ピーター・セラーズ。

ちなみにオープニングとエンディングで登場するアニメーションは、映画を飛び出してスピンオフ。124本ものテレビアニメ短編や様々なグッズが作られるほどの人気を呼んだ。


なお、1980年に亡くなったピーター・セラーズが生前に出演したシリーズは以下の通り。

第1作『ピンクの豹』(The Pink Panther/1963)
第2作『暗闇でドッキリ』(A Shot In The Dark/1964)
第3作『ピンク・パンサー2』(The Return of the Pink Panther/1975)
第4作『ピンク・パンサー3』(The Pink Panther Strikes Again/1976)
第5作『ピンク・パンサー4』(Revenge of the Pink Panther/1978)

1作目ではクルーゾー警部は主人公ではなかったが、2作目から主役に。シリーズ最高傑作と言われるのが第3作(タイトルが2となっているのでややこしい)。70年代に製作された3作品はロードショー番組で何度か放映されていた。

さらにセラーズ没後にも3作が製作。また、2006年と2009年にはアメリカ人俳優スティーヴ・マーティンがクルーゾーを演じたバージョンも公開。無関係だが、90年代のヒットシリーズ『オースティン・パワーズ』にも同じスピリットを感じる。

『ピンク・パンサー2』の見どころ
・中近東の美術館で世界一のダイヤモンド“ピンク・パンサー”が盗まれる
・パトロール警官に降格したクルーゾー警部のドジぶり
・クルーゾーの奇行に頭を悩ますドレフュス署長のクレイジーさ
・クルーゾーと召使いケイトーの奇襲カンフーごっこ
・犯人候補のリットン卿とその妻クローディーヌの美女ぶり
・クルーゾーのコスプレ七変化と迷探偵ぶり

馬鹿馬鹿しい映画と思われることだろう。後に残らないその場限りのエンターテインメントの極致とも言える。だがあの頃のテレビのロードショー番組の想い出のおかげで、『ピンク・パンサー』は今でも“子供”たちの記憶に残ったままだ。

予告編

DVD『ピンク・パンサー2』

DVD『ピンク・パンサー2』






*日本公開時チラシ

*参考・引用/『ピンク・パンサー2』パンフレット
*このコラムは2918年7月に公開されたものを更新しました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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