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チャイナタウン〜ジャック・ニコルソンのために描かれたフィルム・ノワールの名作

2018.10.31

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「この映画は、チャンドラーの原作を映画化したどの作品よりもチャンドラー的かもしれない」

TAP the SCENEでも今まで『さらば愛しき女よ』や『ロング・グッドバイ』といったレイモンド・チャンドラー原作を取り上げてきたが、今回『チャイナタウン』を改めて観てみると、その世界観にまったく違和感はない。それどころかロマン・ポランスキー監督が言うように、“そのもの”の作品のように感じる。

ことの起こりは1971年。プロデューサーのロバート・エヴァンスが、気鋭の脚本家ロバート・タウンに『華麗なるギャツビー』の脚本を依頼するところから始まる。ギャラは当時としては破格の17万5千ドル。だがタウンはこの話をあっさりと断った。その代わり、自分のオリジナル脚本である『チャイナタウン』を持ち掛けることにした。受け取るのは2万5千ドルになったが、それでも良かった。

チャイナタウンの管轄だった警察官がいてね。「あそこは怠慢が一番」だと言うんだ。どういう意味だって尋ねたら、中国マフィアのの世界では言葉や人間関係が複雑だから、警察が犯罪を防止しているつもりでも、逆に犯罪の手助けをしてしまうことがあるって。「あまり首を突っ込みすぎずに怠慢でいるのが一番なのさ」と。


そのことが頭から離れなかったタウンは、チャンドラーの作品をすべて読んで執筆を開始。『ファイブ・イージー・ピーセス』『さらば冬のかもめ』での主演で俳優として成長著しかった親友ジャック・ニコルソンを想定し、気性、仕草、言葉遣いを描いた。

ポランスキーはニコルソンからの電話で、『チャイナタウン』の監督を要請された。脚本に恵まれず次回作に悩んでいたポランスキーはこの話に飛びついた。ヨーロッパ人の彼は妻のシャロン・テートを悲惨な事件で数年前に失ったということもあり、アメリカ行きを葛藤したそうだが、本作を撮るためにハリウッドに戻る決意をした。

ヒロインには当初ジェーン・フォンダが有力だったが、ポランスキーはフェイ・ダナウェイを推薦。傑作にするためには彼女の存在が必要不可欠と考えたようだ。また、結末を巡ってはエヴァンスやタウンと対立。二人はハッピーエンドを望んだが、監督はその反対路線で押し切った。予定調和じゃ面白くない。それに悪玉を演じたのがあの名監督ジョン・ヒューストンだからこそ、そうすべきだと直感したのだろう。結果的に『チャイナタウン』はフィルム・ノワールの名作に昇華した。

1930年代のロサンゼルス。利権絡みや供給問題によって深刻な水不足に覆われている。そんなある日、私立探偵のジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)のもとにモーレイ夫人から依頼が舞い込む。ギテスは金になるので、彼女の夫の浮気調査を進めることにした。

夫のモーレイは水力発電の施設部長であり、ロサンゼルスの地盤の弱さを理由にダム建設計画に反対している真面目な男だった。しかし夫人の言うように若い女と時々一緒にいることは確かで、ギテスは証拠写真を撮影する。後日、モーレイのゴシップは新聞沙汰になった。

事務所に戻ったギテスを待っていたのは、名誉毀損で告訴するというイヴリン(フェイ・ダナウェイ)だった。彼女こそモーレイ夫人だったのだ。すると最初の女は何者なのだろう。誰に頼まれたのか。ギテスはガセネタを掴ませた奴を見つけ出すことにし、事情を知った夫人は告訴を取り下げた。

そんな時、貯水池の近くでモーレイの死体があがった。溺死したらしい。なのに肺には海水が溜まっていた。謎が深まるばかりだ。おまけに嗅ぎ回っていたギテスは二人組の男からナイフで鼻を切りつけられる。もう後には引けない。モーレイの部下やイヴリンの周辺を調べているうちに、町の有力者の存在が浮かび上がってきた。ノア・クロス(ジョン・ヒューストン)、イヴリンの父親である。

クロスはロス郊外の土地を買い漁っている。モーレイがダム建設に賛成さえすれば、この地の価格が高騰して何十億もの金がクロスに入る。モーレイは溺死なんかじゃない。正義感の強い彼は殺されたのだ。しかもイヴリンとクロスの間には禁断の過去があった。モーレイと一緒に写っていた若い娘とは、つまりイヴリンの娘であり、父親はクロスというあってはならない事実。

ギテスの計らいで、チャイナタウンに身を隠し、メキシコへ逃亡を企てるイヴリンとその娘。クロスは“自分の娘”を取り戻すため、イヴリンを見つけ出す。居合わせたギテスはかつての同僚である警部に真相を話すが、耳を貸そうともしない。誰もが買収されているのだ。銃声がこだますると、イヴリンは死んでいた。みんな呆然と佇むだけ。何もできなかったギテスは呟いた。「この街は怠慢だ……」

予告編


『チャイナタウン』

『チャイナタウン』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『チャイナタウン』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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