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再会の時〜激動の1960年代後半に世界を本気で変えようとした世代のために

2019.09.28

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映画をたくさん観ていると、そのうち“ある世代のため”の映画があるということに気づく。“あの時代”に生き、“あの感覚”を持ち合わせていないと、心から共感できない物語。『再会の時』(The Big Chill/1983)はまさにそんな位置付けで、アメリカでは1960年代に青春期を送ったベビーブーム世代に向けられた映画。日本で言えば「全共闘・団塊世代」ということになるだろう。

特に激動の1960年代後半を生きたか・生きていないかでは大きいはずだ。ヒッピー、フラワー・チルドレン、カウンターカルチャー、ラブ&ピース、ドロップアウト、アクエリアス、ウッドストックなど、新しい価値観が若い世代によって次々と力強く生み出され、「30歳以上を信じるな」のスローガンのもと、「世界が本当に変わるかもしれない」という予感に包まれた“あの数年間”。

しかし、生きている限り誰しも年を取る。かつてあれだけ反体制を掲げていたはずの若者は、やがて大人になり、次第に体制側へと組み込まれていく。そしてある日、当時抱いていた志とはかけ離れた人生を送り、金儲けや子育てに追われている自分であることに鏡越しに気づく……。

『再会の時』は、昔の仲間の一人が自殺したことで故郷の町に久しぶりに集まった男女の姿を描く。週末を同じ家で過ごしながら、10数年の歳月が自分たちに一体何をもたらし、どう変化したのかを確認していく。経営者、俳優、記者、医者、弁護士、主婦など職業も様々だが、共通しているは「今の自分を愛せるのか」という疑問・冷却・幻滅。要するに“あの熱かった時代”のこだわりを捨て切れていなかったのだ。

この映画が素晴らしいのは、だからといって昔の回想シーンが一切ないところ。前を見つめようとする姿勢がある。そして「結婚はしたくないが、子供は欲しい」という女性への眼差しをクライマックスにした点だ。唯一、サウンドトラックが昔の曲で一貫されていて、マーヴィン・ゲイの「悲しいうわさ」やローリング・ストーンズの「無情の世界」が極めて効果的に使われている。

ところで『リアリティ・バイツ』という1994年の映画がある。これは90年代に20代を生き抜いた世代にとっては記憶に残る映画の一つ。80年代半ばに『再会の時』が公開された時はまだ中高生だった。激動の60年代とはあまりにも違う価値観や消費文化の中で育った世代だ。映画のオープニングで主人公が大学の卒業式でこんなスピーチをするのを思い出した。

今の若者は、たかがBMWを買うために週80時間も働いたりしません。60年代に反体制やカルチャー革命を謳った人々は今や無心に毎朝ジョギングする始末。では、現在の私たちはどう生きるべきか。受け継いだ重荷をどうすべきか。卒業生の皆さん、答えはいたって簡単です。その答えは、答えは……分かりません(I Don’t Know)


予告編


『再会の時』

『再会の時』

詳細/コメント


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『再会の時』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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