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黒いジャガー〜『スーパーフライ』と並ぶ“ブラックスプロイテーション”の名作

2019.08.09

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1970年代前半の“ブラックスプロイテーション”を代表する映画といえば、『スーパーフライ』と『黒いジャガー』(Shaft/1971)だ。音楽ファンなら前者はカーティス・メイフィールド、後者はアイザック・ヘイズのサウンドトラックはご存知だろう。アルバムはともに全米チャートでトップに立ち、ヘイズの「黒いジャガーのテーマ」はナンバーワン・ヒットに輝いた。

“ブラックスプロイテーション”とは、黒人による黒人のための映画であり、公民権運動やニューシネマを経たことで生まれたジャンル。それまでの道徳劇の中に出てくるような優等生的な黒人より、都市部の貧民街に生きる黒人の姿をリアルに描こうとしたもの。よって犯罪や麻薬といった過激なものが多いが、内容がどうであれ、黒人としての誇りがメッセージとして込められているのが特徴。『スウィート・スウィートバック』(1971)がその先駆けと言われている。

アイザック・ヘイズは1960年代にスタックスのソングライターとして腕を磨き上げ、サザン・ソウルの発展に貢献。69年の『Hot Buttered Soul』の成功でニューソウル・シーンの第一線に躍り出た。まさに全盛期にこの映画音楽の仕事に取り組み、中でもインストナンバーはヒップホップに多大な影響を与えた。なお、DVDの特典映像にはゴードン・パークス監督のリクエストに応えながら、サウンドトラックを披露するヘイズやバンドの姿が収録されている。



ゴードン・パークスは黒人初のメジャー映画監督の一人。1948年から1972年までライフ誌のフォトジャーナリストとして長年活躍してきた人であり、作家として自伝『知恵の木』(1963)がベストセラーになった。パークスの写真は公民権運動ともシンクロしながら、アメリカの歴史的瞬間と立ち向かう黒人たちの姿を捉えた。ちなみに『スーパーフライ』の監督はパークスの息子だ。

物語の舞台はニューヨークのハーレム。私立探偵のシャフト(リチャード・ラウンドトゥリー)の今度の仕事の依頼先は、ハーレムの裏社会を牛耳るギャングのボス。任務は誘拐された一人娘の救出。いくらでも金を支払うという。

犯行はハーレムを拠点とする黒人解放運動の過激派の仕業だと伝えられるが、シャフトはリーダーと顔馴染みだった。ギャングのボスは今回の救出劇に過激派の力を必要としており、過激派も活動資金に困っていて、両者は協力することになる。誘拐したのは麻薬商法をめぐって対立したマフィアなのだ。警察も不穏な空気を嗅ぎつけ始めた。そしてシャフトが動きだす……。

『黒いジャガー』は、その後『黒いジャガー/シャフト旋風』『黒いジャガー/アフリカ作戦』と続編が作られ、2000年にはサミュエル・L・ジャクソン主演でリメイク版が上映された。リチャード・ラウンドトゥリーはシャフトの伯父役で出演している。

ところで、毎年アカデミー賞の季節になると、黒人キャストやスタッフが関わった映画の動向に注目が集まる。今回も『ブラック・パンサー』やスパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』がノミネートされたが、残念ながら作品賞には至らなかった。

音楽業界ではヒップホップ/R&Bがロックのセールスを上回り、遂にシェア率トップとなったのが2017年。この流れはハリウッドの映画産業にも好影響を与えるのか? 今後も良質なブラック・ムービーが1本でも多く増えることに期待したい。

予告編


大ヒットしたアイザック・ヘイズによるテーマ曲

『黒いジャガー』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『黒いジャガー』パンフレット
*このコラムは2019年2月27日に公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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