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アンダー・ザ・シルバーレイク〜LAとポップカルチャーと陰謀論を描く新感覚サスペンス

2019.05.24

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アメリカ映画には「時」と「場所」が大きく作用する。何年頃? 季節は? 朝それとも夜? ニューヨーク? ロサンゼルス? それとも北部や南部?…… この“いつ”どこで”を経て魅力的な「人物」や興味深い「出来事」が描かれていく。特に場所や土地は映画全体のムードを示すことある。誰もが特定の風景を思い浮かべるからだ。

LAは美しさと恐怖、異常なほどの富とその真逆の貧困が混在している街だ。ハリウッドヒルズには豪邸が立ち並ぶ一方、小さなアパートからその豪邸を眺めるだけの人たちもいる。


例えば、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督はある日そんなことを考えながら、『アンダー・ザ・シルバーレイク』(Under the Silver Lake/2018)の脚本を一気に書き上げた。

主人公のサムはロサンゼルスに住む33歳。もっと意味のある人生を送ることを渇望している。本で読んだりTVで観たりするような人生だ。サムは我々の代弁者だ。自分の中には優れた何かがあると信じており、自分が特別な存在であることを気づかない世界に対して憤りを感じている。


デヴィッド・ロバート・ミッチェルの頭の中には、デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』、ロバート・アルトマンの『ロング・グッドバイ』、ロマン・ポランスキーの『チャイナタウン』、コーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』などがあったに違いない。どれもロサンゼルスを舞台にした“人探し”映画だ。

これはサムの堕落した生活が行き詰まった頃に起こるミステリーとの遭遇の物語。サラという名の失踪した女性を探す。彼が彼女を愛しているからではなく。捜索という行為がサムの血を騒がせる。


『アンダー・ザ・シルバーレイク』はさらにもう一つ、ポップカルチャーへのオマージュや憎しみも込める。大量の音楽、映画、TVドラマ、コミック、TVゲーム、雑誌、広告、都市伝説などがサンプリング&コラージュされる様子は、ゴダールの『気狂いピエロ』やタランティーノの『パルプ・フィクション』の系譜だ。

それだけじゃない。流行や消費というものはすべて秘密結社に操られていて、我々はその巨大な権力に支配されているという陰謀論まで登場する。

「ソングライター」と名乗る怪物のような老人が、「君の父親が若い頃に聴いた曲も、君が幼い頃に聴いた曲も、現代のティーンが踊っている曲も、何もかも私が作った曲だ」と言って、ザ・フー、オジー・オズボーン、ジョーン・ジェット、フォリナー、ニルヴァーナ、バックストリート・ボーイズらのヒット曲を弾きまくるシーンは圧巻。

そしてサムは目の前の悪夢を終わらせるため、カート・コバーンのギターを持ち上げ、ザ・クラッシュのポール・シムノンやマイケル・シェンカーのように振り下ろして、ソングライターの顔を叩き潰す。

LAのシルバーレイクに住むサムは、家賃滞納に迫られたある夜、自分と同じアパートに住む美女サラに魅せられる。デートの約束を交わしたものの、翌日サラの部屋からは荷物も彼女自身の姿も消えていた。LAでは最近セレブの失踪事件が相次ぎ、深夜には犬殺しが出没している。時間だけはあるサムはサラを探し出すため、独自の捜査に取り掛かる。

コスプレ好きのセックスフレンド、サラと関係がありそうな女の子3人組、「イエスとドラキュラの花嫁たち」という名のバンド、同人誌「シルバーレイクの下に」のオタク作者、夜のサービスと兼業する女優、ホームレスの王、ソングライター、失踪したセレブの娘らと接していくうちに、サムは遂にサラを探し出すのだが……。

1974年生まれのデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督はオルタナティヴ・ロック世代。R.E.M.の1994年のヒット曲「What’s the Frequency, Kenneth?」が映画のテーマ曲のように響いている。(中野充浩)

予告編


『アンダー・ザ・シルバーレイク』

『アンダー・ザ・シルバーレイク』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『アンダー・ザ・シルバーレイク』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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